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2012-03-31

社長

昨日は社長の最後の出勤日だった。この節目で、自分の勤める会社の社長が変わる。こうしたことに立ちあう機会、つまり自分が7年以上もお世話になっている会社で、17年にもわたって会社を経営してきた創業者が社長職を離れるのを見送るような機会は、私の人生でこれが最初で最後だろうと思う。

少し前にその通達を目にして、驚きとともにまず思ったのは、社長は今どんな想いだろうかと按じる気持ちだった。明日からは、うちの会社を傘下におさめるグループの別会社の社長になり、社会的には「栄転」といえる人事だ。しかし、自ら創業した会社、17年間浮き沈み激しい市場にもまれながら必死に会社を守り、社員を守り、波瀾万丈な年月を経て今に至るわけで、想いのほどは私などに想像のつくものではない。

ただ、昨日の来期キックオフミーティングでは、社長の伝えていきたいことを皆で受け取ったし、その後のパーティーでは、皆のほんとうにあったかな気持ちが社長に届くのを肌で感じた。それに応える社長の想いも、皆で受け止めていた。とても心豊かなひとときだった。

私が入社したのは2005年で、その頃には社員数もけっこう増えていたから、私が社長と直接お話しする機会はほとんどなかった。入社から数年の間は、社長の立場やそこから見える風景に関心を寄せることもなく、ただただ私は市場をみて現場で働いていただけだった。

そこから数年してようやっと見えてきたのは、社長はマーケティングの仕事をしているんじゃなくて、経営の仕事をしているんだなということだ。おまえは何を言っているのだ…と思うだろうけど、私は本当のところで、それを理解できていなかった。と大きくなってから気がついた(えーと、30歳とか超えてからかもしれない…)。

これに気づくと、自分の勤める会社は船のように見えてくる。経営層というのは、大海といえる市場に船を出し、船を舵取りしている。私は1乗組員として、自分の持ち場から海を見て、自分の役割を日々えんやこらしている。

乗り込んだ船は、風雨や、ときには嵐に見舞われることもあるけれど、私はそれで船が沈んでしまうのではないかとか、吹っ飛ばされて海に放り出されてしまうのではないかとか、そういう危機感を心のど真ん中で抱え込むことなくやってきたんだと思う。あったとしても、経営者のそれとは比にならぬものだ。私はその船に身を委ね、地に足がつくことを当たり前として仕事に励んできたのだ。

昨日のパーティーの席では、意を決して社長をつかまえ、頭を深く下げてお礼を言った。波瀾万丈な中、社長が必死で会社を経営してくださっている中で、少なくとも私はいつも安定して、やりがいのある仕事をさせてもらってきました。そのことを心から感謝しています。そうお伝えして深くお辞儀をした。私が言えることは、それがすべてであり、それだけしかないのだけど、どうにかそれができて、本当に良かったなと思う。

会社っていうものが、自分にとってどういう支えなのかを深く理解させてくれたのは、今の会社だなぁって思う。明後日からまた、よい関係で、支え、支えられてやっていけたらいいなぁと思います。

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