インタビューする仕事
gihyo.jpで連載している「Webクリエイティブ職の学び場研究」の第5回、第6回が公開された。この2回は、VOYAGE GROUP執行役員CTOの古賀昌法さんをインタビューした前編・後編。
第5回(前編)- 成長をサポートする仕組みと文化をつくる
第6回(後編)- クリエイティブ職向けに考え抜かれた育成・評価の仕組み
私がこの連載記事を書くときのスタンスは、「本編には書かなかったんだけど実は…」的なネタが後に残らないように仕上げること。第1回を書き上げたとき、ふとそう思ったのだ。なので本編は基本的に、取材を通して自分のアンテナが反応したことに素直に焦点をあてて構成を考えている。自分の考えも添えて。だから構成をつくるまでがすごく大変なのだけど、仕上げてしまえばもはや他の場所で「ここだけの裏話」的に語りたいことも特にない。ということで、よろしければぜひご一読を。
それはそれとして。私はインタビューの仕事って全然経験が浅くて、取材して記事を書く仕事ってこの連載がほぼ初めてといっていい…(昔、某プロデューサーから「てにをはがわかればいいから!」と連れて行かれて、よくわからないうちにやることになってしまった一仕事を除けば)。だから、その点ではど素人であることをわきまえつつ、自分の本業の立場から話を伺って、取材から帰ってからうなってまとめつつ経験を積んでいるという状態。
ただ、感覚的にというか無意識的にというか、最初からすごく大事にしていることがある。それは、読んだのが先か、自分が思ったのが先かよくわからないけど、とにかく村上春樹さんの「回転木馬のデッド・ヒート」という短編集の「タクシーに乗った男」の中に出てくるこの一節そのもの。
インタヴュアーはそのインタヴューする相手の中に人並みはずれて崇高な何か、鋭敏な何か、温かい何かをさぐりあてる努力をするべきなのだ。どんなに細かい点であってもかまわない。人間一人ひとりの中には必ずその人となりの中心をなす点があるはずなのだ。
村上春樹さんという人は、私がとても大事にしたいともやもや思っているようなことを、どこかであらかじめ言葉に表しているような人で、これもまったくそういう一節。読んだのはずいぶん前なんだけど、すごく心に残っていて、この連載を始めた頃にも手をのばして再読した。
一人ひとりの中に必ずある、その人となりの中心をなす点をさぐりあてるってことなら、別にインタヴュアーに限った仕事じゃない、例えばキャリアカウンセラーだってこういうことをして人の話を聴いている。だから、この言葉にはおおいに支えられ、勇気をもらってインタビューの仕事をしている。
この連載を読んでくれた人が、取材に応じてくれた方の崇高な何か、鋭敏な何か、あるいは温かい何かを感じ取って読み終えてくれたらいいな、と思いながら書いている。それは当然、とても難しい仕事なのだけど、それを心において書いていけたらなと思っている。
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