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2011-08-11

カウンセラーとコーチ

カウンセリングとコーチングの違いって、けっこう説明するのが難しい。実際のところ、する側とされる側のコミュニケーション過程や、する側の役割やアプローチの仕方、求められる資質・能力には共通する要素も多分にあると思う。場面設定としても、相談する側の目の前には山があって、「目の前に山があるんです」という状態でやってくる。そういう人を専門性をもって支援する、という役割は同じだろう。

とはいえ、そこで使われる専門性の核心は別物であろうし、キャリアカウンセラーの立場からすると、私はコーチよりカウンセラーのほうがしっくりいくって思う。コーチの人もおそらく、カウンセラーよりコーチのほうがしっくりいくって思ってやっているんじゃないかな。でも「じゃあ、その差異って何?」って問われると、なかなか説明が難しいのだった。

それが、「あぁ、こんな感じか」ってすっきりしたのが先日のおしゃべり。元上司に、会わせたい人がいると声をかけられて、お会いした女性の一人がコーチご専門の方で、あれこれお話を伺っていたら、「カウンセリングは問題解決、コーチングは目標達成を支援する」って説明がしっくりいきそうだ、と腹に落ちた。

目標はあるけど、達成までの伴走者が欲しいとか、目標達成までのプロセスが曖昧で、その過程を専門的に支援してほしいとか。そういう場合は、どっちかといえばコーチが適任だろう。目標というよりは問題を抱えている状態、こういう問題があるとか、こういう悩みがあるとか、あるいは問題がこれだというのはないけれど、どうももやもやしたものを抱えているという場合は、どっちかといえばカウンセラーが適任と言えるのでは。

もちろん、目標達成と問題解決は、同じ事象を言い換えて表すこともできるし、となると言葉遊びのように感じられるかもしれない。けれど、私がカウンセラーとして個人的に感じるところは、実はだいぶ違うのだ。そのぶん、この問題解決か目標達成かという切り分けに、すごいすっきり感があった。

半分はおんなじことやっているような気もするんだけど、支援する者として相談者に向き合ったときの事象の捉え方が違う。私はやっぱり、相談者のもってきたものの「問題の本質」は何なのかを捉えようとする。コーチなら、その人の中に「具体的な目標」を見いだそうとするのが最初のセッションだろう。

ここにどんな違いが出てくるかというと、これはあくまで1カウンセラー視点での話だけど、私は「その相談者が語る問題」を吟味する。その相談者が語る問題は、本当にその相談者が問題だと思っているのか、それともそうは思っていないけれど私にそう話しているのか。本当にその相談者がそれが問題だと思っているとして、それは本当にその相談者の抱える問題の本質なのか、別のところに本質が隠れていないか。別のところに本質が隠れているのだとしたら、それはなぜ隠れているのか。気づく機会、あるいは能力がなかったのか。それとも本人が気づきたくないためか、だとしたら目を背けたい理由は何か。そこに視線をあわせて問題の本質に向き合うためには、どういう心理的な障壁を乗り越えなくてはいけないか。そういうことを模索しながら、問題の本質を特定していきつつ、手をとって本人と探っていける関係作りをしていく。

つまり、問題の核心を特定し、相談者としっかり握り合うところまでをいかに専門的に成し遂げられるかが、カウンセラーの重要な特殊能力じゃないかと思うのだ。もちろん、その後の問題解決までの道のりをともに歩むこともあるけれど、特に治療的カウンセリングでなく能力開発的カウンセリングの場合、会ってその日のうちに「今までこれが問題だと思っていたけど、そうじゃなかった。問題がはっきりした」と言って帰っていって、あとは自分で進めていっているという人が少なくないだろう。

これは私がその辺の工程を得意としているってだけかもしれないけれど、個人的には、けっこうこの問題の本質の特定と本人が本質を捉える支援をするってあたりが、貢献しどころの中心じゃないかなって気がしている。

一方のコーチっていうのは、目標設定までは比較的早い、前工程なんだと思う。もちろん個人差があるから、具体的な目標をもって来る人もいれば、目標設定からがっつりコーチがサポートするケースもあるだろう。目的を聞いてみると、目標がずれているのでは?っていう場合には、その辺の軌道修正から入るケースもあると思うけれど、ともあれ目標設定は支援のスタート地点。

コーチの本領発揮は、むしろここからだろう。目標を特定したところから、達成の道のりを伴走者として支援していくところの専門性が高いんじゃないかしら。だから、一定期間のおつきあいになることが多いんだと思う。いつまでに、どこどこに到達しましょうって目標を確認して、そのためにはいつまでに何をしてってマイルストーンを設定して、それをやっているかをみていったり、途中で困ったときに様々なアプローチで専門的支援をする。目標設定の支援も含むけど、それ以上に目標達成までの道のりを支援する過程がメインな感じ。

多分に個人的な見解がまじっているので、あくまで私が前工程を得意にしているだけって懸念もあるけれど、個人的にけっこうすっきりしたので、メモがてら。

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