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2010-10-08

研修の提案

「実践」「応用」「アドバンス」あたりの言葉というのは、まさしく形のない概念語だなぁと思う。研修サービスでいうと、その都度「この案件における“実践”とは何を指すのか」を仮説立てて、言葉に落として、こういう意味合いでいいですかね?って関係各位と合意形成しないと実質的な意味をもたない。どんな業界にもおそらく、こういう取り扱い注意なワードの代表格というのが存在するんだろうと思う。

もちろんこういったワードにも単体での意味がある。言葉は文脈に頼らない意味を何らかもっているはずで、「実践」や「応用」は下に「基礎」や「基本」を置き、その次のステップを指すのだという概念理解は共通のものだろう。これが逆に落とし穴になるんだと思う。

共通認識とおぼしきものがあるからこそ、「実践といえばこの辺でしょ?」という暗黙の了解を、人は無意識に枠組みする。だけど実際には、どこからどこまでを「基礎」の範囲とし、どこからどこまでを「応用」の範囲とするかは人それぞれ。組織ごとの暗黙の了解もある。この概念と対象の不一致を大前提にしておかないと、現場はえらいことになる。

現実的に、ある人のイメージする「基礎の中身」が、ある人のイメージする「応用の中身」とイコールということは往々にしてあり、こういう食い違いが起こると、研修サービスとしては大いに問題なのだ。というわけで、研修の作り手としてはいやがおうにも概念の定義づけにセンシティブになる。それでも、やってもやっても…の世界で、概念の言語化、認識あわせというのはどの案件でも常に難しい。

クライアントさんに研修を提供すると、今回の研修を踏まえた「実践編」「応用編」「アドバンス編」を提案してもらえないかという相談がよくある。個人向けの講座でも、事後アンケートで今後勉強してみたいテーマを問うと、「今回の講座の応用編」という回答をまま見かける。

これは、ここから先への言語化が難しいということの表れと言えるし、ここで進んで骨を折るのが研修の作り手ということになる。この組織、この受講者にとっての「実践」「応用」「アドバンス」とは何なのか、その概念イメージをとらえて言語化し、対象者とすりあわせる。

この言語化にあたって、クライアント担当者の問題意識をヒアリングするほか、以前に提供した研修の講義内容や、そのとき演習で提出いただいた受講者のアウトプットから、受講者がすでに何を習得できていて、何はできていないのかを分析して現状の問題点をこれと置く。

それを解決するために、研修というアプローチから何ができるのか、実践現場から離れたオフJTだからこそ、やって習得の能率を上げられるプログラムを考える。これを提案書に落としてクライアントにプレゼンし、現場の問題意識とすりあわせながらブラッシュアップする。

研修の提案、やってもやっても奥が深くて難しい。でも案件をこなした数だけ苦悩した分だけ血肉となっていると信じて、引き続きがんばります。と、結論がないので、がんばります宣言で幕を閉じる。

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コメント

言語化が難しいから書籍なり研修なりで形にすると価値が生まれますね。クライアントワークとしての研修が、要望をヒアリングにして形にするのに対し、書籍は要望を著者と仮説立てして形にしていく違いはありますが。

それぞれに難しさと達成感があります。が、同時期に平行してやるもんではありませんね(笑)

んー、それぞれに難しいですね、ほんとに。
昔は、書籍ではないものの個人向けの講座という形で、仮説立てて世に問うてみるという仕事が大半でしたが、今はクライアント仕事が大半なので、先方ご担当者とのキャッチボールをいかに洗練した言葉でやりとりできるか、プレゼン→フィードバック→ディスカッションをいかに活かしきれるかが、すごく大事なんだなって思う今日この頃。
ここで自分がうまくキャッチ&スローできないと。クライアントさんが皆頭の斬れる方々なので、日々このキャッチボールによって鍛えてもらっている気がします。

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