成功する腕
第二回インタラクションデザイン研究会に参加。内容は安藤日記さんでばっちりということで、私は個人的なメモをもそもそ書く…。インタラクションデザインをテーマにグーグルの方5人が登壇、なかでも印象に残った川島優志さん(@mask303)のお話を。
アンカリング効果、現状維持バイアス、サイモン効果、フレーミング効果など、理論に裏打ちされた効果とグーグルの取り組み実例をひもづけながらのお話(詳細は安藤日記さんで…)は、それ自体なるほどーの連続だったのだけど、一番耳に残っているのはそれら解説を始める前のこの言葉。
Aがいいか、Bがいいかは出てくる。でも、なぜそうユーザーが振る舞うのかはわからない
グーグルは言わずもがな膨大なデータを有しており、川島さんは日々それと向き合っている。だから、AプランとBプランでテストをすれば、AがいいかBがいいかは答えが出てくる。だけど、なぜユーザーがAあるいはBに大きく反応したのかはわからない。効果と実例をひもづけて解説した後にも、川島さんが「この○○効果によってこの成果が出たとは言い切れない」と確認を入れていたのが印象的だった。
わかっているのは、人は合理的には動かないということ
そういう前提をもって尚、プランを練り、ユーザーに問い、反応を受け取り、その根拠を探っている。安易に根拠を決めつけ、それをノウハウと呼んでしまえば話は終わる。けれど、そこに安住せず、日々変化していくことを当然のものとして答えを問い続けている。目の前にある根拠らしきものにも懐疑的な目をもち、わからない、これのせいじゃないかもしれない、次もうまく行くとは限らない、他国でうまく行くとは限らない、そのスタンスを崩さずに日々手探りを続けている。
終わりに話していたのは、こんなこと。
ユーザーのことをまだ全然わかっていない、だから新鮮な発見の連続
昨日正しいと思っていたものが、今日はもう正しくない。そんなものがいくらでもある
もしかすると、私たちは決して答えのない問題を日々問い続けているのかもしれない。でも、意味を問わずにはいられない。いられないから意味を問うのだけど、答えがあるかないかもわからない中で、論拠がなければ動けないと、1年2年足踏みを続けていても、事態は一向に良くならないどころか、後退するばかりだ。ここは割り切って、「答えなんてあるかないかもわからない、必ず成功する法なんて世界のグーグルだってもってやいないさ」ということで、やってみるほか道なしではないか。
私たちは、上等に出来上がっているもの、成功しているものを見ると、そこまでのプロセスに目を向けることなく、「自分とは違う」という評価を作り手に向けがちなのかもしれない(ってそれは私が凡人だからか…)。でも、その背景にはたいてい「上等」「成功」を実現するための実直なプロセスがある。それは決して奇異なものではなく案外スタンダードな方法論であり、ただそれを本当にやってのけていること、やり続けていることが大きいんだと思う。異常さがあるとすればそれは後者のほうで、そこに常軌を逸したストイックさがあるのではないか。
成功する法を心得、その腕を磨いてから策を打つのではなくていい。そこに志があるなら、策を打つ過程で成功の法を模索し、試行錯誤を繰り返し、腕を磨けばいい。その過程を経てしか結局、成功する腕を磨くことなんてできないのだ。勝手な解釈だけど、私はそんなメッセージを受け取り元気をもらった。
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