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2010-02-02

現代の最大の退廃

橋本治氏の荒治療「青空人生相談所」を折り目のあるところだけ再読。この本はスゴイですよ。相談者も読者も、有無を言わさずこてんぱんにやられます。こんなの文庫本で出して怪我人でないのかしら。少しでも気を抜いたら本の中から橋本氏が出てきて、胸ぐらつかまれてひっぱたかれそうな勢い。それが思いのほか(人によっては)爽快かもしれないというスゴイ本。

でも、スゴイのは勢いだけじゃない。というか、スゴイの本質はそこじゃない。一つひとつの問題の捉え方、洞察の深さ、答えの導き方、その答えの相談者への伝え方が芸術の域で、キャリアカウンセラーとして大いに学ぶところがある(私はこのアプローチはとらないけど…)。

そうそう、最近月一くらいでキャリアカウンセリングをしています。計画だててというわけではないけれど、昨年末そろそろそういう取り組みにも時間をとれたらいいなと思っていたら、なんとなくいろいろご相談をいただくようになり。これを私は「風」と呼びますが、人生こういう風はほんと誰しもに吹いているものだと思う。風は感じるように生きたほうがいい。

それはおいといて、下に引用するのは、同氏が「付き合っている彼女に結婚をほのめかされて困っている26歳男性のご相談」にあてた回答の抜粋で、

どうせあなたはお分かりにならないだろうからお教えしますが、あなたが彼女と別れなければならない最大の理由は、“それが陳腐な女だから”です。

に続く話です。ここだけでもこの本の雰囲気を感じ取っていただけると思いますが…、1987年の本ながら、いい感じに2010年の私たちをひっぱたいてくれるなぁと。恋愛云々関係なく、何か今自分にひっついているテーマで一読を。

陳腐というのは凡庸ということです。凡庸ということは、ザラにあるということです。ザラにあるんだから、別にそれをいやがることもないんじゃないかというのが、現代の最大の退廃なのです。
陳腐であるということは、退廃しているということです。現代では、既に退廃もそこまで大衆化しました。平凡な顔をした退廃とくっつく必要はないということです。そして、平凡な顔をした退廃ほど、逃げるのに困難を極めるものはありません。何故ならば、平凡こそは、人類の行き着く最終の安息の地だからです。そこが退廃しています。そこに居着いたら、もう永遠に逃げ場はありません。だからすぐ逃げなさいと言っている訳です。
既にそれに見込まれているあなたにとって、多分逃走は困難でしょう。困難ですが、それをやらなければ、あなたも死にます。

人生観は人それぞれなので、この考えに好き嫌いはありましょうが、ときにはこれくらいの熱をもって自分の人生について考えてみる時間をもつのもいいもの。ときにはこういう本で身も心もざっぶーんと洗われてみるのもいいもの。でも健康じゃないときに読んじゃダメな本だと思います。

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