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2009-12-29

Web業界と「明日の広告」

佐藤尚之(さとなお)さんの「明日の広告」を読んだ。こういう本は、ほんと出てすぐ読まないとうまみを半減させちゃうよなと積ん読を反省。初版2008年1月って、丸2年経過している…。しかし、まさに広告界の実務家が語る本という感じで、軽快に抽象-具象を行き来する話を興味深く読ませていただいた(Twitterでフォローしていたり、その方のブログを読んでいると、なんとなく勝手に一人で親近感をもってしまって敬語を使いたくなる)。

フランクで大変読みやすいだけでなく、相手の立場を想定して、いかに無理を強いずに読み手に今もっている先入観を取り払ってもらって本質を伝えるかという配慮(というか創意工夫、というか挑戦)に満ち満ちていて、さすがコミュニケーション・デザイナーだと思った。

というわけで、主には広告業界の人に向けた「変わらなきゃ!」のメッセージなんだけど、「いわゆる広告業界には属していないぞ」と思うWeb業界(便宜的に)の人も、さとなおさんが広告業界の人に向けて、どんな先入観を取り払おうとしているのか知っておくと有益だと思うし、それをどんな伝え方で取り払おうと試みているのかという面でも、大変学びがあると思う。

なんというかな、「広告という概念の時代変化はしっかり捉えられているよ」という人も、今広告業界が直面している、目の前に蓄積された豊かなノウハウとか知識の体系図、長年の経験で教え込まれたさまざまなことを一旦頭の中でぼかーんと崩壊させて脱構築するみたいなことを、実際広告業界の中の人がどんなふうにやってのけるかというのは、今後に大いに役立つような気がする。中に入って中で一定期間活動してきた人にとってのその挑戦は、外から見ている人が思うよりずっとずっと大変なんじゃないかって気がする。

でもたぶん、それって広告業界だけの話じゃなくて、Web業界の中でも今後、広告業界以上に頻繁に繰り返されていくことなんじゃないかなって思う。90年代と今じゃWebを下支えする概念てずいぶん入れ替わっているように思うし、今から10年後もまたけっこう概念そのものが変化しているんじゃないかなーと思うし。その入れ替え時期に、自分自身はもちろん、中で一定期間を過ごした周囲の人に対しても変化を共有していくのって、結構大変なんじゃないかって気がする。わけで、広告業界の今の問題解決に学べることってそういう意味でもあるのかなーと漠然と感じたりした(って本の感想から遠すぎるか)。

あと、Webを専業とする人が意識的に尊重しておいたほうが安全に思うのは、ネット外の他メディアを軽視、過小評価しないことか。中からは知らないメディアをわかったように評価するのはすごく危険だし、今の変化はWebというメディアに移行しているのではなくて、Web含めた各メディアの役割が細分化されて適用されるようになってきているという変化だと思うので、やっぱり他メディアへの一定の理解と、それぞれを尊重する気持ちがないとお話がつながらないなぁと思う。

ただ、これと別に、各メディアをすべて飲み込めるくらいの懐をもった情報インフラとしての「インターネット」というのがあるとも思っていて、だからそろそろ「インターネット」という言葉をメディアの一種っぽく使うのはやめたほうがいい気もしている。いやはや、話がずれすぎたところで素人の感想文終了。

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