二律背反の真髄
二律背反についてはよく考える。ここでも以前に2回ほど「二律背反性」という言葉を書いている。一つは、なまぬるカウンセリング批判みたいな…カウンセラーの端くれとしての思いを。もう一つは、ものづくりする人への安易な批判に対する批判めいた…ものづくり支援者としての思いをつづったもの。なんだ、けっこう批判的だなぁ、このブログは。でもこの思いは全然今も変わらない。愛情をもつ人間は批判を内包するものだという個人的納得。
これと関連して、最近「ルビンの盃(さかずき)」のすごさを再認識。「ルビンの壺(つぼ)」とも言う。再認識というより新発見。ルビンの盃って、見方によって図と地が反転するってところがすごいのだと思っていたけれど、それで終わってはいけなかったのだなぁと今さらながら。
ルピンの盃は、リンク先の絵をみていただくとわかりやすい感じ。黒いところに着目すると盃に見え、白いところに着目すると2人の人の顔に見える(ポインタを画像の上にのせると反転させて確認できる)。これは私たちが外界を見るときに眼にはいるものを、まとまりのある形(図)とそれ以外(地)に分けて見ているから。
この文章も、文字を図として、白い部分を地として見ているからこそ混乱せず読めているわけで、図も地も一緒くたに見えて図がうまく浮かび上がってこないと、文章を読むのはひどく大変な作業になることが推測できる。
ちなみに、下の図はパワポで作った私の自作「ルビンの盃」。色をつけ忘れた…。Googleで画像検索すると、ひっかかってくる画像がどれも笑っていなかったので、2人をちょっとごきげんにしてみた(クリックすると拡大にっこり)。
それはいいとして、これと同じことを言っているようでいて、実はもう一歩踏み込んだ捉え方だなと思ったのが今回の新発見。「わかりやすい心理学」(文化書房博文社)より。
わたしたちは、この同じ1枚の絵のなかにさかずきと人の顔があることを知っているのですが、それでも2つを同時に見ることはできません。つまり、一度に眼に入る範囲(視野)においては、一方しか図になることができないのです。
どうでしょう、これ。すごいなぁと私は思ってしまったのだけど。一方を見ようとすると、もう一方は目で捕らえられなくなってしまう、というのをまさに体感できる絵。ほぼ同時に見ることはできるのだけれど、完全同時にはどうしても捕らえられない。瞬間瞬間で行ったり来たりして盃と人を捕らえ直している自分を確認することができる。つまり、二律背反の真髄みたいなのを体感するのに、すごく簡単で明快なエクササイズだなって思ったという新発見。
自然界のさまざまな事柄は、相反するような両極を持ち合わせていて、どちらか一方という存在の仕方では成立しえないものがたくさんある。右と左、表と裏、前と後ろ、内と外、オンとオフ、善と悪、正と負、勝ちと負け、S極とN極、男と女、白と黒、静と動、天と地、光と闇、生と死、昼と夜…。わんさかわんさか。
ただ、両方存在することは比較的わかりやすくて皆了解しているんだけど、その両極をまったく同時には機能させられないという真髄はちょっとわかりづらい。それを瞬時に体で納得させてもらえるんだよなぁ、この絵は。これが二律背反の核ですよね。認識が甘かった。大丈夫、大丈夫ですよ。あっちの世界にいったりしてませんよ。私はこう見えてたいそう現実主義な人間なのです。ここにいます、はい。まぁ、とりあえずメモ。
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なんだか哲学的やなあ。今年は頭で考えることと心で思うことが正反対で苦しかったりしたなあ。でもね、実は同じものなんじゃないかと思えて来たりして。
投稿: あや | 2009-12-17 00:05
それこそ哲学的やなあ…というコメント。頭も心もあやさんですからね、同じものなのかもしれませんなあ。。
投稿: hysmrk | 2009-12-17 00:10
うむ、、深いです。。おっしゃってることよくわかります。
ほんと、、確かに一方を見ていると同時にもう一方は捕えられない。
私の職場で取り扱っているパーソナリティというものも、それが良い悪いでとらえられるものではなく、「緻密・几帳面」も「楽観的」も長所としても短所としても捕えられるのです。
「これは高い方がいい」と思いがちですが、職場、環境ごとに求められているものは微妙に違っているわけで。。
でも人ってその人のある側面を短所と同時に長所と捕えることって難しいですよね。どちらか片方(目につくのは悪い方かな。。)の性質のものだと思ってしまいがちです。
・・・って話が大きくすっ飛んですみません。
投稿: ベル | 2009-12-17 09:09
いえいえ、ベルさん。私はベースとして「人」を考えているので、今回の話も私は「人」のことをイメージしながら書いていました。おっしゃっていることは、まさに私のイメージするところです。後天的なパーソナリティも先天的なキャラクターも、やっぱり時代や土地によってポピュラーな極というのがあるので、社会的に人気度による影響はいろいろ出てきますよね。なんかな、そういうこともしっかり学んでいきたいと思っています。
投稿: hysmrk | 2009-12-18 00:07