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2009-10-17

「青みがかった写真」の弁別

すごい、棚橋さんのブログに私が登場している。彼女=私。なんと。

「例えば、フォトショップで画像の青みを消す方法を覚えたとします」と彼女は言いました。
昨日のある場所での話のなかででてきた言葉です。教育とか学習に関する話。彼女はこう続けました。
「でも、仕事に戻って、学んだ方法を役立てようとしても、画像をみて青みがかってることに気づかなければ、せっかく学んだその方法を役立てることはできない。誰かに青みがかってると指摘されなければ、自分では学んだ方法を使うことはできない」と。

すごい、私の話がたいそう端的にまとまっている…。というわけで、今日はこれに便乗して書いてみようかなと。なんか前に「withD」(リンク先は「withD」閉鎖のため移転先の同カテゴリー)で書いていたキャリアコラムみたいなネタになるけども…。コホン。

このての「知的技能」というのは“階層構造”で成り立っていると言われています。ガニェさんが示したのは下の図のような感じで、「階層構造の下位にあるスキルの遂行能力が、高次のレベルのスキルの遂行能力の前提条件である」(『インストラクショナルデザインの原理』より)と考えられています。

Intellectual_skills_2

「青みがかった写真」を例にとると、まず「弁別」って一番下のところが、“普通の写真”と“青みがかっている写真”を見比べて「違うな」と区別がつくこと。ワインであれば、“高級ワイン”と“安いワイン”を飲み比べて味の違いがわかること。これが弁別です。別にどっちが高級かを示せなくてもいい(はず)。ただ違いがわかることがこのステップです。

次が「概念」のステップ。ここは「この写真は青みがかってるな」とか「このワインは高級だ」と、それが何なのかを示せる能力を言います。違いがわかり、それが他と比べてどうなのかを指し示したり、“青系”“高級品”と分類できなければなりません。

その次が「ルールと原理」のステップ。ここで初めて「Photoshopで画像の青みを消す」操作方法を適用する段になる。こう階層構造で考えていくと、この前提として「この写真は青みがかっているから補正が必要だな」ってことが自分でわからないとルール適用の能力の発揮しようがないってことになるわけです(分業だったら成り立つけど一連のタスクはこなせないということ)。

さらに、実際の仕事場面ではもう一つ上の「問題解決」の領域が求められるのが常。何らかの媒体に写真を載せるのには、その状況にマッチした画像補正をする必要がある。赤みがかった写真に「青みがかった写真を補正するやり方」を適用していいはずはないし、それが何分野の誰向けの媒体で、全体がどんな配色で背景色が何かによっても適切な補正の施しようは変わってくるかもしれません。

なので「ルールと原理」だけ習得していても、実務場面ではなかなか機能しないというのが先の話。なんだけど、一般に売られる学習ツールというのは、比較的この「ルールと原理」にフォーカスしたものに流れやすいんじゃないかと思うのです。商品として開発しやすく、買い手もつきやすい気がする。

もちろん「ルールと原理」も、この4階層の1層を担っているわけで必要不可欠なステップです。ただ、学習する側も、学習ツールや場を提供する側も、この階層構造を認識した上で、自分が誰の何の課題のためにどの階層にフォーカスして取り組むのか狙いを定める必要があると強く思うのです。無自覚に易きに流されることなく。というか私はそういうふうに学習の場づくりに携わりたい。

そして、実際そう簡単に習得できるもんじゃないし、こもってお勉強すればいいってもんじゃないのがファーストステップの「弁別」じゃないかなって思うのです。日常生活の中で、経験を重ねて時間を重ねて身につけていくものかなって気がします。熟達者が初心者に対して「いい作品をたくさん観ろ」とアドバイスするのも、おそらくこの「弁別」能力の習得を促すためのものだろうと思います。

まぁ、難しい話でなかなか私もうまく言葉にできないんだけど、うまく説明できなくとも学習の場をデザインする実践家として、この辺の狙いはかなり意識して仕事をしています。学習を一緒くたにしないで、「弁別」「概念」「ルールと原理」「問題解決」にわけて考えられること、それも一つの知的技能ですよね。

そうやって、学習をサポートする対象が潜在的に求めていることを探って、どのレイヤーを範囲としてどういう順番で学んでいったら能率的なのか(必ずしも下位層からが良しってものではないので)、相手をよぅく観て設計していきたいなと思っています。それが私の仕事のなかで一番の創造力の発揮しどころだとも思っています。あぁ、ちょっとすっきりした。けど相当自己満足ですよね、説明下手ですみません…。

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