重力ピエロ
「父が無能だったとは思わない。むしろ、逆ではないか、と推測してもいる。ただ、他人に能力をひけらかす種類の人間ではなかった。そして、他人に能力があることをひらかさない限りは、穏やかさだけが取り柄の、無能な人間に見えてしまう種類の人間だった」。
「重力ピエロ」で自分の息子にこう語られるお父さんに心揺さぶられた。その後、お父さんのしなやかな強さは、ぞんぶんに行間にえがかれていく。
読後に思う。自分の能力を認めてもらうことじゃなくて、自分の発揮した能力が大切な人たちの幸いに通じていくことに喜びを得られる人間でありたいと。能力っていうのは、認めてもらうために高めるのではなくて、発揮するために高めるものだと。当たり前のことながら、しみじみ思う。
自分と5歳しか変わらない「重力ピエロ」著者の伊坂幸太郎さん。彼が同時代に生きて作品を送り出し続けてくれることに心から感謝。私の人生をこの先も長く豊かにしてくれるにちがいない。
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