抑圧
キャリアカウンセラーの端くれとして、キャリアに関わる書籍はちょこまかと読んでいたりするのだけれど、今回はそこからちょっとした共有。前回くだらないマニアック情報で終わってしまったので、そのお詫びも兼ねて真面目な話を。
精神分析で「抑圧」といわれる心理的な防衛機制がある。人はなんらかの出来事に直面したとき、その場ですぐその出来事の重さに応じた感情体験を意識できるとは限らない。「悲しいとき」を想定するとこれはイメージしやすいと思う。悲しみを伴う出来事が生じたときって、人はそのときの自分が受け止められる程度に悲しむ。それ以上には悲しめない。悲しまないように抑圧される。そうやって精神のバランスを保とうとする。では、その場で受け止めきれなかった感情はどうなるかというと、どうやら心の奥底に沈殿して残るようだ。
いい大人になればこういう感情体験をもつ人も少なくないのではないかしら。それは今どうなっているのかしら。時間をおくことで沈殿物が自然と消えていったように感じる人もいれば、今なお心の底のほうに何かが沈んでいるような気がしてならない人もいるのかな。結構つらいですよね、そういうのって。
私が読んだ本の中では、クライエント(来談者)がカウンセラーに話をすることの効能の一つとして、この話が取り上げられている。話をすることで、当時抑圧して受け止めきれなかった感情を再体験し、その出来事を現実のこととしてありのままに受け入れる力を育む、という話。
これは結構難易度の高い領域で、軽率に手を出してはならないものだと思うのだけれど、本当にそういう効能をクライエント本人に実感してもらえるようなキャリアカウンセリングを実践できる人間になりたいと思っている。それから、私の数年来の沈殿物も、そろそろどうにかしないといけないなぁと思ったり。
※参考文献:「キャリア開発/キャリア・カウンセリング」横山哲夫編著、生産性出版
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