世界に浮かぶお風呂
私のおうちというのは、かなり生活感のないところである。「生活感がない」を良いようにとると、生活臭がしなくてちょっとスタイリッシュな感じがあるかもしれないけれど(私のおうちという時点でそんな印象はもってくれないかもしれないけれど)、とにかく実際のところはやっぱり「臭いもないが匂いもない」、率直に言い表すとつまり、つまらない、退屈な空間だろうなぁと思う。
とはいえ、それがここでの私なりの生活の営み方なのであって、それはそれでまぁ仕方ない、としよう。それならそういうのをとことん愉しみましょうということで(もないんだけど)、限りなく力の働いていない生活空間の中を、限りなく省電力で過ごしてみるということをしてみる。ときどき、してみる。
「今日は湯船につかってから眠ろう」という夜に、まずは浴槽にお湯をためて、しばらくしたらミニコンポをオフにして部屋を無音にして、さらに使わない部屋の電気はしっかりと消して、無音で真っ暗な部屋を後に残して、文庫本片手にお風呂場に行く。本を読むのでお風呂場の電気はつけるけれど、換気扇は切っておく(まわしておくとすぐ、はっくしょい!と寒くなるから)。
そうすると、本当に本当にシーンとした中にちゃぽんと身をおくことになる。そこで、今自分がいる小さなお風呂場の外は、自分の部屋もその外の世界もすっかり真っ暗なのだと思い描くと、お風呂場だけがほのかな灯りをともして、広い世界の中にぽっかり浮かんでいるような感じがする。
そこにある静けさに、限りない恐怖と、恐怖に包まれた一時の平和を感じる。恐怖というよりは、漠然と「不安定な感じ」というのかな。そういう一時の平和の中で読書を愉しむというのは、なかなか悪くない。うん、悪くない。そう思うのは、ココの住人ぐらいかもしれないけれど。
今は、あさのあつこさんの「バッテリー」(角川文庫)を読んでいる。会社の人が読み終えた本を貸してくれた。次回の父の課題図書候補。面白いです。
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