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2004-09-05

そもそも

ふと思ったことですが、「そもそも」という言葉はスゴイ。見かけによらず、それまでの議論を根底から覆す強大な破壊力を持つ言葉だ。この一言によって、その場にいる人全員を、ものすごく本質的なところ、大本のところ、源流のところに誘う力を持っている。それだけの威力を持ちながらも、「そもそも」といういかにも「のそのそ」と同義のような風貌で世の中を渡り歩いているところがまた大物である。

何がスゴイのかもう少し思いを巡らせてみると、この言葉を考えた人はスゴイというところに行き着く。これを考えた人は、自分の周りの人たちがもう具体的な話をあれこれ進めていて、だけどそんなあれこれを模索するうち大本の目的とずれてきてしまったところで、すかさずそれを察知し、「そもそもさぁ」と口にしたのである。いや、それまでに無かった言葉がどんな感じで世の中に産み落とされるのか知らないが、まぁ、きっとそんな感じである。

「そもそも」という言葉がない時代に、「そもそも」視点を持ってそのズレに気づくというのはスゴイことだと思う。私たちが生まれた時にはそもそも「そもそも」という言葉があったので、「そもそも」という概念を早いうちから身につけることができた。しかし、その言葉のない時代には、「そもそも」的状況を頭の中で概念化してから「そもそも」という言葉を作り出さなくてはならない。この過程には大変高度なスキルが必要とされたことだろう。

この言葉の創造者は、ある事象の一連のプロセスの中で、嗅覚で常にその事象の大本の目的をとらえ、大局的な見地から目的と目の前の議論のズレに気づく視野・視点を持っていたのだろう。そして、「あ、ズレてる!」という違和感を感じた際に、さじを投げたり、小難しい話をして皆をやり込めようとしたりせず、「そもそも」という庶民感たっぷりの言葉を用いて皆を原点に誘ったのである。なんて魅力的なお方なのだ。(妄想)

世の中にはたくさんの難しいことがあり、それぞれにその道の玄人と素人の関係があるわけだが、難しいことを難しく言うより、難しいことを平易な言葉で伝える方が難しいと思う。よく難しいことを難しく言って、これがわからないなんてバカは相手にできないと聞き手を見下す人がいるが、それは聞き手がバカというより話し手のスキル不足だと捉えるべきだ、と思う。自分が素人側に立つことが多いばかりに、それに対する小さな反発をしているに過ぎないかもしれないが…。自分が玄人側に立てた暁には、そう考えたいと思う次第だ。

難しいことを平易な言葉で表すといえば、私の知る?人では物書きの橋本治さんが一等賞だ。きっとあんなお方が「そもそも」みたいな言葉を世に生み出したんだろうなぁと思う。偉大である。

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