2021-01-19

山口周「ビジネスの未来」が美味だった

ホタテのバター醤油焼きなみに美味だった山口周さんの「ビジネスの未来-エコノミーにヒューマニティを取り戻す」の読書メモ。

山口周さんの本は、事実と分析と主張と挑発と激励が全部入りで、知性と理性と感性と野性と全部詰まって書かれている感じが好きだ。単純なので挑発にのって奮起し、激励によって快い読後感を得る。

導入部の心奪われポイントを走り書いておくと(キャラ全然違うけど)。

ビジネスはその歴史的使命を終えつつあるんだよ。低成長、停滞、衰退だとか、売上・利益が伸びない、株価が上がらない、成長機会が見つからない、新規事業が立ち上がらないとか言うけどさ、「低成長」って言い換えれば「成熟」した状態ってことだろ。「高成長」できる余地があるってのは「未熟」だってことさ。私たちはもう十分に成熟したってことさ。このビジネスゲームは、もう完了しつつあるんだ。

過去200年、いやいや古代から振り返ったって「物質的な貧困を社会からなくす」って使命はもう達成されつつある。古代から2000年に渡ってずっと上昇してきたGDP成長率の推移は1950~1990年にピークを記録した後、下降局面に突入。この先もう一度盛り返す気配もない。私たちは人類史上、初めて経済成長率が上昇から下降に反転する瞬間を生きているんだよ。

そういう自覚がなくって、過去のノスタルジーに引きずられてしまっているのは愚かだよ。私たちは「経済成長」というゲームに不毛な延命・蘇生措置を施すんじゃなくて、このゴール達成を祝祭しつつ、新しい活動、新しいゲームを始めるタイミングにあるんだ。この世界を「安全で便利で快適な(だけの)世界」から「真に豊かで生きるに値する社会」へと変成させていくのが新たな使命なのだよ、と。

ウィリアム・ブリッジズ(米国の臨床心理学者&組織開発コンサルタント)は、「転機をうまく乗り切れずに苦しんでいるケース」には共通して「過去を終わらせていない」という問題が潜んでいると言っているよ。終焉をポジティブに受け容れて、次のゲームに行こうぜ、という話。

これは本の始めのところで話されていて、ただ問題提起するだけでなく、次のゲームってどういうことという話に切り込んでいく。なんか、元気もらったなぁ。

私たちが乗っかっているさまざまな社会システムはやプラットフォームは「成長が当然の前提」となっている1950年代から1960年代にかけて作られたもので、それによって日本の社会ではさまざまな軋轢や齟齬が起きている、現状とシステムの不整合が起きている。

まずは、思考様式・行動様式が「インストルメンタル」から「コンサマトリー」に変わっていく社会を自覚して、頭の中でこねて馴染ませて、自分の思考・行動様式、身近なところの当たり前に見直しをかけていきたい。

インストルメンタル
・中長期的
・手段はコスト
・手段と目的が別
・利得が外在的
・合理的

コンサマトリー
・瞬間的
・手段自体が利得
・手段と目的が融合
・利得が内在的
・直感的

労働と遊びが融合して一体化する見通しをもって、わがごととして考えるべきことは多い。

2021-01-14

「Web系キャリア探訪」第27回、体系化より個別化

インタビュアを担当しているWeb担当者Forumの連載「Web系キャリア探訪」第27回が公開されました。今回は2000年から20年にわたって「花王のインターネット活用」を最前線で率いてこられた板橋万里子さんを取材しました。

花王でインターネット一筋20年。時代の変化を無理なく楽しむ仕事観

テレビCMの制作会社、日本マクドナルドを経て、2000年に花王に入社。以来20年間ずーっとずっと、花王のインターネット活用をテーマにキャリアを積んでこられた板橋さん。

数多くの多様なブランドを擁し、日本を代表する企業である花王で、絶え間なく進化していくインターネットをどう活用していくかを前線で考え続け、社内の専門家チームとして会社を引っ張っていく立場に立ち続けてこられたとあって、転職せずとも常に周囲の環境、自分の役割が変わり続け、チャレンジする機会に事欠かなかったキャリア変遷がうかがえました。

コーポレートサイトを作ったり、デジタル広告を活用するところから始まり、全ブランドのサイトを作ったり、花王のWebサイトのガイドラインを作ったり、自社のコミュニティサイトを立ち上げて運営したり、ソーシャルメディア活用を推進したり、動画マーケティング、SNSマーケティングと。

ただ、それぞれ流行にのって手を出すというのではなく、インターネットの発展とともに登場してくる新たな概念、手段、ツールやサービスをいち早くキャッチアップしては、まず自分で使ってみて、どんなものか自分の実体験を通じて理解することを怠らない。そして「花王でどう使えるだろうか」と問うて、考えやアイデアを膨らませるという基本所作を、着実にやり続けてこられた。丁寧に、真面目に、真っ当に、自分の手元で続けてこられたことが何より尊いことだよなと敬服しながら、お話を伺いました。

また若手の育成に関しても、へたに新人の育成方法を統一・体系化しようとするのではなくて、一人ひとりを丁寧にみて関わっている様子が伝わってきて素敵だなぁと思いました。

板橋さんは、以前この連載にご登場いただいた廣澤祐さんの初代上司にあたる方。本当に花王の方にお話を伺うと、真面目さ、真っ当さにこそ魅了されます。

なんてったって私、廣澤さんの取材で、本当にいい会社だなぁと思いまして、以来キュレルのボディシャンプーを使い始めました、はい。ボトルの後に詰替え用にも手を出しまして、もう安泰な客となって、めでたし、めでたし。ご興味ある方は、ぜひ読んでみてくださいませ。

2021-01-13

YouTube「キャリアデザイン講座」第6回を公開(自己分析の方法)

勤め先のYouTube公式チャンネルで公開している「クリエイターのためのキャリアデザイン講座」、このたび第6回を公開しました。今回は、けっこうポピュラーなWill、Can、Mustの3つの切り口から自分について掘り下げるアプローチをご紹介。

【クリエイターのためのキャリアデザイン講座6】自己分析の方法

なかなかどうして「クリエイターのための」っていう掘り下げが甘いなぁと毎度反省しながら昨年末まで動画を公開し続けていたのですが、今回はいくらか濃度を高めて公開できたか…というところ。今年は回を重ねるごと濃度アップを図っていきたい。

年末年始にもっと作りためておければ良かったのだけど結局、この第6回を仕上げるので精いっぱい、台本作るまでで1月4日の仕事始めを迎えてしまった…。あーでもないこーでもないと書いたり消したり書き直したりしているうちに年が明け、あれを削いでこれを削いでと10分のお話にまとまったときには休暇が明けていた。

仕事始めの4日に台本を作り終え、その後えっさほいさとスライド作ってアニメーションをつけてナレーションどりして動画ファイル作って…と。

冬休みあけに宿題を終えていない中学生の気分で「いや、でも、ほら、年明け初回の現国は水曜日だから、宿題提出までは実質あと2日ある」みたいな言い訳をひとりごちながら仕上げた次第。水曜ぎりぎりに一式素材をまとめ、映像編集してくださる方にパスして一息。

今回の動画作りのプチ成長は、(前回も同じこと言っているけれど)初回当時に比べればだいぶ普通にしゃべっていること。中身がいっぱいだったので、10分程度におさめるべくテンポアップした結果でもある。

あと、観てくださる方との双方向性を意識して、メモをとってもらいながら使ってもらえたらなぁという想定で声がけしたりスライド起こししたことあたりか。

スライドに1点打ち間違えが混入しているのは猛烈に恥ずかしいのだけど、気づくタイミングが遅すぎた&内々で誰もつっこまなかった&軽度のミスなので、そのままになっている。反省。

引き続き自宅で家内制手工業しているお手製感が半端ない仕上がりですが、本年も数か月は続けるかと思いますので、ご愛顧のほど、よろしくお願いします。私と直につながっている方には無用の長物かもしれませんが、周りの若者などで、ちょっと見てみたらいいかも?と思う方などいらしたら、ご紹介いただければと。

中身はオーソドックスなキャリアデザインの基礎知識ですが、今の時代感をつかみながら、クリエイターの皆さんにできるだけ親しみやすく、1本10分程度で気軽に見られるものを念頭において作っています。2週間おきで更新していますので、どうぞ、ごひいきに。

2021-01-09

新しい習慣を作りたいときは66回繰り返す

昨年末にオンラインで行われたATD Japan Summitで、脳科学を専門とするBritt Andreatta博士(7th Mind, Inc.)がお話ししていた新しい習慣づくりのメモ(セッションの中のごく一部なんだけども)。

習慣は、繰り返しから生まれる。何かを繰り返しやっていると脳が「これ何度も何度も同じことやってるから、低エネルギーパッケージにして自動操縦にしようぜ」って頭を使うのだと。

そのときに紹介していたマジックナンバーが、20、40〜50、66。
●20回繰り返すと、神経ネットワークが形成される
●40〜50回繰り返すと、脳がそれを習慣に変えて、自動操縦になって、考える必要がなくなる
●66回繰り返すと、ニューロンはかなり太くなる

とのこと。ニューロンは筋肉のように使うほど太くなるのだと。つまり「習慣づく」ということだ。ジョギングも2ヶ月くらい毎日走り続けると習慣としての安定感出てきた気もするし、体感的にもふむふむ感があって印象に残った話。

従業員や部下に習慣を身につけさせたいといった場合は、どうすれば66回繰り返し練習するようになるかの学習環境をデザインすると良いとも。

習慣づくりはかなり奥深いので、これはあくまでその片鱗の知見ということになるけれども。個人の習慣、成功する企業の習慣、社会の習慣づくりまでを論じた本だと、チャールズ・デュヒッグ氏の「習慣の力」*にはいろいろ詰まっていて興味深く読んだ。けれど、けっこう分厚くて(Kindleで読んだんだけど…)読み終えるまで大変だったので、とりあえずぱぱっと生活の支えになりそうな目安の数字のシェア&自分の備忘録として。「騙されたと思って」というフレーズが絶妙に合うわ。

*チャールズ・デュヒッグ氏「習慣の力」(早川書房)

2021-01-05

人に会えるのは生きている間だけ

3年前の年賀メールきりになっていた方が、2年ほど前に亡くなっていたことを昨晩知った。同じ世界に生きながら、私よりずいぶんと複雑な世界に身をおいて孤独に闘っている哲学者のような女性だった。

一人の人間という容れ物におさめるにはあまりに複雑な情報を感受せざるをえない精巧なつくりに生まれついてしまって、それを切り盛りできるだけの優秀な頭脳と精神とを持ち合わせてもいて、だけどもやっぱり人間だもの、いかに優秀といえ大変な苦労をしているように思われた。

私が一緒に過ごした時間はたいそう短く、やりとりしたメールも数少ない。けれど、いつも彼女は自分の本当の言葉を選んで、話して、書いた。そういう日々のことだけでも、大変なエネルギーを使っていたのではないか。手元にある彼女からのメールを読み返してみて、改めてそう思う。自分の本当を全うするって、大変なことだ。だけど、彼女は本当じゃないことを選べなかったのではないか。

今回は、共通の友人が年賀状を送ったことから、ご家族より返事があって、このことがわかったけれど、私のようにメールのやりとりじゃ、ネット上で届かぬメールが右往左往して、いずれ消失してしまうだけ。ぼーっとしている間に2年でも3年でも経ってしまう。

伊坂幸太郎「モダンタイムス」に出てきたセリフが、脳裏に浮かぶ。

あなたはまだ実感ないだろうけど、人に会えるのはね、生きている間だけだよ

そうは言っても、自分が会いたい人誰しもに会えるわけじゃない。大方は、もう会えないのだろうなぁとも思う。だからこそ、自分に時間を割いて会ってくれる稀有な人とは、大事に時間を過ごしたいと改めて思った。本当に限られた、ありがたい機会なのだなと。こんな時勢ではあるけれど。

2021-01-03

今年はきちんと

昨年は地味につらい時間に覆われていたので、今年の始めは(私にしては珍しく)この節目をうまく使って気持ちを切り替えよう、ひと区切りつけようという意識が高い。いつもはもっとずるずるって感じの幕開けなのだけど…。

この年末年始に改めたのは、まず静寂時間の確保だ。静かな時間を大事にしている。そうすると、いろんなことを自分の頭で考えたり、あれをしよう、あれはどうなっているんだっけ、そういえばこれを調べたかったんだ、本を読もうと、あれこれ自分が始動する感覚がわく。これは手放してはいけない。

昨年はわりとYouTubeやTVerなんかも見て気晴らししていたのだけど、視聴覚を奪われるのはやっぱり、どうも意識も時間ももっていかれ過ぎるきらいがある。これをラジオに戻し、なんとなくじゃなく人が手をかけた作品にきちんと向き合うのを本と映画から摂取するようにすると、なかなか豊かに暮らせることを、この年末年始で実感した。

あとは、この休みのほとんど仕事の宿題を抱えて書いたり読んだりうんうんうなったりしていたので実質、日常生活の延長だったのだけど…。

大晦日と元日の2日間は年末年始っぽく過ごせた。大晦日に父と一緒に母のお墓参りに行って、年越しそばを食べて、スーパーで大量の買いものをして、晩は妹方が送ってくれたカニ鍋を作って満腹。元日は兄一家を迎えておせち料理とお雑煮とお年玉でもてなして。妹は急遽、遠方から帰省できなくなってしまい、初詣も先延ばしにしたものの、家族で父を囲んで過ごせて良かった。

今年は、きちんと自分を生きていこう。

2020-12-27

開放、自然、野性、編集、物語り

今年はしんどかったなぁ。一年を振り返ろうとすると、喉がきゅっと締まって、目の奥がぐっと熱くなってしまう。こういうときはあんまり過去を振り返らずに、今やるべきことをやり、未来に目を向けて突破するのが年越しの健全な過ごし方だろうなと思う。

振り返りは、そうだな、10年くらい寝かせるとちょうどいいくらいかな。10年前のそれを思うと、そのくらいがちょうどいいあんばいな気がする。その頃には、どういう形でか軽やかになっていたい。あたたかく、強く、しなやかに生きていたいものだ。

この間、駅前の大きな交差点で地図を片手に困っていそうなおじいさんがいたので、「お困りですか?」と足を止めて声をかけたら、「そうなんです。困ってるんです!」と志村けんのコントみたいな滑舌で返ってきて、田舎から出てきて右も左も分からないと言うので、一緒に地図を見て道案内をした。おじいさんは行き先を把握すると、しゃきっと右手を額にあてて敬礼、「ありがとうございますっ」と言って顔をくしゃっとさせた。

そうだ、こうやって生きていったらいいんだと思う。ダメだダメだと自分で自分の首をしめるようなことをせず、こうやって生きていったらいいだけなんだと。

仕事内容はこの一年で大きく変わり、年末にはだいぶ、自分はこういう役どころで所属の枠組みなく野性的に活動したらいいんだという役割の果たしどころが見えてきた。サラリーマンとして働いていることを弱さとみる人もいるけれど、職業や就業形態といった属性をもって人の生き方や働き方に優劣、強い弱いの評価をつけるのは偏見だよなって、何十回も考えて自己問答して今は思う。

一方で、気を抜くと自分が勤める組織・環境に過剰に内部化してしまって、いわゆるサラリーマンになってしまうっていうのも体験的に思うところあり、それはそれで自分で注意してかからなくてはならない。

また職種や所属の枠組みにこだわらず、縦横無尽に自分の使いどころある所どこでも働くスタイルを追求するつもりだけれど、それによって専門性を磨くことを止めてしまわないように、無個性化していかないように、健全な自己批判とのバランスが大事だ。要は、職種や組織の所属なんて小さい枠組みにおさまってたまるかという野性を大事にしてやっていこうという話だ。人間だもの。

私はデータや数字の取り扱いにめっぽう弱いのだけど、データや数字が情報になるあたりで興味が出てきて、それを編集して知識から知恵へ、それを編集してコンテンツからサービスへ、それを編集してシナリオ立てて人と人をつなぐメッセージへ展開させたいという思いがあるらしく。その辺の総じて編集という役割を期待されることが多いので、そういうゆるふわをいろんなところでつかまえて、いろんなところに分け入って、いろんな人の中にある情報をもらって、自分なりに物語をつむいで提示していけたらいいなぁと思う年の瀬。

2020-12-09

YouTube「キャリアデザイン講座」第5回を公開(自分の現在地を把握する)

勤め先のYouTube公式チャンネルで公開している「クリエイターのためのキャリアデザイン講座」、年内最後の第5回を公開しました。これまでは、キャリアって何?キャリアについて考える意味ってあるの?というそもそも論について話してきましたが、今回からキャリアデザインの方法論に話題が移りました。

【クリエイターのためのキャリアデザイン講座5】自分の現在地を把握する

まずは、キャリアデザイン・プロセス上のどこに自分が位置しているのか、全体マップを見渡して現在地を把握しておこうというのが、今回のテーマです。

キャリアデザインの工程ってこうなっているんですって、ざっと紹介して終わりではなく、その知識をどうやって使ったら有効なのかというのをかみ砕いて伝えたいと思うと、どうも話が長くなって、1回で前進できる歩幅がものすごい狭くなってしまう、これは果たしてメリハリなのか冗長なのか…。

今回の動画作りのプチ成長は、オープニング画像に見出しを入れて、今回の中身がわかるようにしたこと。あと初回から比べれば、だいぶ普通にしゃべっているふうになった感はあるのですが(プチすぎる)。

相変わらず、自宅でこつこつ中身練って台本作ってスライド作ってナレーション&アニメーション録ってと細々やっている次第で、お手製感満天なのですが。来年も小さい成長を重ねながらせっせと作って参りますので、何かのタイミングでちょっと覗いたろっかなと思った際は、あたたかい飲み物でもお手元に用意した上で心穏やかに見てやってください。

中身はオーソドックスなキャリアデザインの基礎知識ですが、今の時代感をつかみながら、クリエイターの皆さんにできるだけ親しみやすく、1本10分程度で気軽に見られるものを念頭において作っています。来年もどうぞ、ごひいきに。

2020-12-05

Webサイトをつくってきた人々の写真展「Era Web Architects」の被写体に

「この中に一人だけなんでもない人が混じっています。誰でしょうか?」という問題を出したらダントツで1位を取れる自信があるってなものなんだけど、Webサイトをつくってきた人々の写真展「Era Web Architects」というプロジェクトで、被写体30人のうちの一人に選んでいただいた。

1年くらい前だったか、プロジェクト発起人の坂本貴史さんから連絡をもらって話を聞いたのが最初。こういうプロジェクトをやりたくて、という趣旨説明を受けとった私は、当然「なので裏方を手伝ってほしい」という相談が続くものと予想して次の一言を待っていたのだけど、その後のメッセージが写真展の被写体側の要請とあって、ものすっごい驚いた。そんなバカな、と。

スマホ片手に通りを歩きながらしばらく、どういうものの考え方をしたら被写体側に私を採用する話が成り立つんだろうかと頭を悩ませ、もう一度プロジェクトの趣旨を読み直したりした。

ただ、基本自分にはもったいないようなありがたい話が巡ってきた際は前向きに受けるようにしているのと、腕利きの写真家が自分のようななんでもない被写体をどう映すのか見てみたいという好奇心と、何はともあれ私にとって戦友のような発起人の企画を応援したいという気持ちが働いて、快く引き受ける旨、その場で返答した。

一応の納得の足場としては、自分の役どころはまぁ遊びというか、はずしというか、バラエティ担当というか、今回の人選に多様性と独自色をもたせる役割なんだろうと見た。この手の人選に私を混入させるなど、後にも先にも坂本さんしかいないだろうから、自分が入ることで、人選の独自性をむちゃくちゃ高めている自信?はある。不快な方、嫌悪感を抱く方もあるかもしれないが、これからは多様な価値観を寛容に受け止めることが求められる時代ということで、私も他の面々と横並びだなどと一切思い上がっていないので、どうか溜飲を下げてご容赦願いたい。

さて、その最初の声がけから、コロナの影響でスケジュールは後ろにずれつつも、この秋ごろから目に見える形でプロジェクトは活発に動き出し、私も少し前に写真展用のポートレート撮影をするため、都内のスタジオに足を運んだ。

スタジオには、発起人の坂本さん、写真家の坂本貴光さんのほか、少し前に撮影を終えた原一浩さん、中村享介さんがリラックスして談笑していた。私は皆さんと久しぶりに笑顔で再会できたことに120%意識が向いて片時の同窓会のような時間を過ごし、もうそれだけで、これに参加させてもらえて良かったなぁと心から感謝した。

改まった写真撮影なんて、遠い昔に履歴書用の撮影を伊勢丹の写真館でしてもらったくらいか。「女性なんでね、鏡の前でいくらでも準備してください」と席を譲られたところで、化粧道具も持ってきていないし、何か駆使する腕もないし、やることが思いつかず、髪を手ぐしでいくらか整えること3秒、これでいいです…とおずおず準備完了を申し出た。

撮影は、10分だか15分だかみんなとおしゃべりしている間に、写真家の坂本さんがシャッターを切って程なく終わった。ぱしゃぱしゃ何枚も撮るのではなく、ここという彼のタイミングで数少なく撮影が行われる。どういう瞬間をとらえたのかは、私も見ていないのでわからない。その場で覗かせてもらうこともできたのかもしれないが、何か踏み込んではいけない感じがして、写真展までお楽しみとした。

3月初旬に都内(恵比寿)のギャラリーで写真展を催す予定だという。2011年に坂本さんが「IAシンキング」という単著を出したとき、その書籍の奥付に企画協力として私の名前が載っているのを見せたら父がえらく喜んでいたので、今回の写真展も状況が許せば、父を誘って見に行ってみようかと思っている。実際以上に自分の子どもが何かえらいことしたふうに見える、数少ない親孝行の機会だ。

このプロジェクトは、写真展のほか、今すでにYouTubeでインタビュー動画を配信していたり、それを順次マイナビ出版「WD ONLINE」で記事にしたり、CAMPFIREで活動資金のクラウドファンディング支援者を募集していたりする。

私の個人的な親孝行はいいとして、このプロジェクトを広くはどう意味づけできるものだろう。クラウドファンディングで支援してもらえるような形で、内輪感や閉塞感をもたれず良い形でいろんな人に意味を見出してもらえるシェアは、どのようにして可能なものだろうかと、しばらく静かに考えていた。

というのは、どうもここ数ヶ月の坂本さんの発信を追っていると、彼はどうやら人の生き死にをも身近に捉えながら、このプロジェクトに並々ならぬ思い入れをもって力を注いでいるらしいことが伝わってきたからだ。

私のようなおまけが下手にプロジェクトを紹介して、格を落としたり下手に批判されるような目には合わせたくない。それは最低限として、何か良い形でこのプロジェクトを知ってくれた人が、それぞれの手元で有意義な意味を見出してもらえるあり方、私なりのシェアの仕方というのはないものだろうかと考え続けていた。

そんなことをあーじゃこーじゃ考えている暇があったら、さっさとシェアするのが一番だろうというのは、それはそれで自分で突っ込み入れつつではあったのだけど。

ネット黎明期から現場で汗水流して働いてきた面々を30人というと、いくらでも切り取り方がある。人の数だけ人選のしようがあるだろう。今回はあくまでも坂本さんが独自の視点で選んだものであり、その独自性にこそ意味がある一方で、別の人が見れば、自分が選ぶならそうはしないなって反発も覚えやすいことが危惧された。

でも、私たちがそれこそインターネット黎明期からずっと大切にしてきた心持ちというのは、こうしたいろんな受け止めようがある誰かの企てに対して、真っ先に落ち度や不満点に目をつけて叩くところから入るのではなく、それぞれが自分の手元に引き寄せて、そこに可能性を見出すポジティブさではなかったか。インターネットそのものが、オープンに、フラットに、情報をつなぎ、人間関係をつなげていく、その恵みの計り知れなさに興奮と感謝を覚えながら仕事生活を充実させてもらってきたのが私たち世代であったように思われた。

何かそういう心持ちに立ち返らせてくれるプロジェクトでもあって、いろんな人とそういう原点の心持ちを交わしていく、情報も人間も気持ちも有機的につながっていく発展的プロジェクトの種に、なったらいいなぁと思う。結局、だいぶモヤッとした文章にしか書き表せない自分の力量を認めて、これで一旦シェアすることにしたのであった…。

2020-12-04

「Web系キャリア探訪」イベント記事の公開

月1連載しているWeb担当者Forum「Web系キャリア探訪」のスピンオフ的イベントに出演する旨こちらにも記しましたが、そのレポート記事が公開されました。

リモートワークのマネジメント方法は? キャリアや働き方どう変化する?

当日はインフォバーンの田中準也さん、ツルカメの森田雄さんから「Web界隈の私たちの働き方 コロナでどう変わった?どう変わる?」をテーマにお話を伺いました。

私はというと、、中身をどう構成するか整理する事前準備でいくらか役に立てたかな…くらいの感じで、当日はお二人の自由演技にすべてを託していますが(一応、進行役で出ている)。

ちなみに、事前に整理しておいたコロナ禍の「こんな問題よく聞かれたよね」リストは、こんな感じ(イベント当日は動画内のスライドでお見せして、話のとっかかりに使いました)。


個人の働き方の変化、浮上した問題と解消法

  • 在宅勤務で困った!(通信環境、育児との両立、腰痛い…)
  • 在宅勤務が合わない(書斎ない、集中できない、滅入る…)
  • 仕事の進め方、プロジェクトのまわし方に変化は? (ブレスト、営業、プレゼンむずい…)
  • 職場でのコミュニケーションが減った、何か工夫した? (気軽な会話減る、声かけづらい…) 云々

リモートでマネジメントする側/される側の難しい局面

  • 「仕事を教える/教わる」のが難しい
  • 「メンタル不調に気づく/気づいてもらう」のが難しい
  • 頑張りすぎる人、怠けちゃう人の自己管理とマネジメントの関わり
  • 評価が難しい(プロセスを評価する?、どう評価されるのか不安)
  • オンラインでの採用活動が難しい
  • 組織への帰属意識の持続・醸成が難しい 云々

ありがたいことに、キャリアに関する相談ごとを事前にお寄せくださるご参加者が予想より多くいらして、後半はそれに応える形で、コロナ禍だからどうこうというのはあまり関係なく、キャリアについてあれこれお話ししました。

テーマにご興味ありましたらば、お時間のあるときに、ぜひ見てみてくださいませ。これという正解を提示できているわけではないし、そういうテーマでもありませんが、この中の何かに触れることで、ご自身の考えなり状況なりを相対化して捉え直す材料の一つに使ってもらえたら嬉しいです。

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