2019-04-16

「Web系キャリア探訪」第10回、キャリアの棚卸し考

インタビュアを担当しているWeb担当者Forumの連載「Web系キャリア探訪」第10回が公開されました。今回は、P&G、Adobeなど外資系企業を渡り歩いた後、一転?日本の伝統的な大企業に転職、現在KDDIでデジタルマーケティング部長を務める井上慎也さんのキャリア話を伺いました。

40代で外資系から日本企業に転職。数年おきにキャリアの棚卸、自らの価値は「経験値の掛け算」で考える

なかなか真似できない「輝かしいキャリア」というふうに特徴づけるのは簡単なんですが、井上さんのキャリアの最たる魅力はむしろ、誰でも真似しうる「創造的で堅実なキャリアの積み方」にあるのかも、とも思います。

「外資系企業か日本企業か」「プレイヤーから管理職への転向」など、わりといろんな人が直面する課題にすごく丁寧に向き合ってこられて、その時々で自分のことやその状況下をどういうフレームで分析して、どう結論して、どう次を方向づけて行動してきたか、すごく「わかる」ようにお話しくださるんですよね。

2~3年ごとにキャリアの棚卸しをして舵取りしてきたという井上さん。「キャリアの棚卸し」ってよくいうけれど、自分のキャリア遍歴を“多面的に”解釈し直してみる、そこに今までみてきたものと違う自分の価値を読み取っていく機会づくりみたいなものかなぁと思いました。ご興味ありましたら、ぜひお目通しくださいませ。

2019-04-12

Youtube番組「とうふメンタルラボ」を始める

あれよあれよと、なんとなく話の成り行きで、Youtube番組を始めることになった。とうふメンタルラボという番組。

「なった」と言っても、撮影や編集は首謀者たる若き女子たちにお任せ状態だし、メンバーがみんな主体的に企画だてて才能を発揮していくので、私は端っこで、どういう番組にしようかとか、どんな話題を話そうかとか、そういう下打ち合わせにアイディアを出したり、相槌をうったり、みんなの話を踏まえてざっくりした番組の構成・時間割を書いてみたり、収録当日にテーブルや椅子を動かして会場づくりしたり、いきおい本番であれこれしゃべってしまったり、合いの手を入れたり…。だいぶ散漫でテキトーな働きの寄せ集めで、なんとなく居る…という感じなのだけど。

それで申し訳なさが募るかというと、そうでもなく、居心地の悪さを覚えるかというと、そういうのもない。しばらく様子をうかがってみるに、闊達な彼女らにとって、私のそんなありようは特段気に障らないらしく、むしろ「私あれやりたい」「私これやるね」というのを、どうぞどうぞ!と快く受け入れる私のような者もいたほうがバランスがいいのではないかとすら都合よく考えてしまう…、それくらいみんな快活に動くのだ。

私がボーッとしている間に、ことは順調に進んでいく。私は「そこにいると、ちょうどいい人」くらいのあんばいで役目を果たしていったら十分じゃないか!みたいなスタンスに早くも落ち着いている。

そんなわけで、ちょいちょい合いの手を入れながら、みんなのエネルギーに触れ、それぞれの個性を味わっている。これを作っている女子たちは私のちょうどひと回り年下。このメンバーたちの「作りたい」「表現したい」というプリミティブな気持ちと、それを形にしていくエネルギーに触れている時間は、私に新鮮で心地よい体験をもたらすのだった。

しかしまぁ、収録中はみんなの話が面白いので、それでいいのだけど、後に編集された映像を見せてもらったり、公開して人様に見られる状態に身をおくのは、なんともそわそわして落ち着かない。自分じゃ冷静な評価のしようもなく、ただただ腰がひける。自分たちで内輪で話していると面白いことも、喫茶店でよそから聞こえてくるとちょっと白けちゃうって、あるあるじゃないですか…(誰ともなく)。

心臓に悪いので、頃合いをみて私は裏方にまわって構成作家のような役目に集中できたらと企んでいるのだけど、最初から「私できません!」という齢でもなし、出端を折るようなこともしたくない、何事も経験だろうとも思う…というわけで、一通りやってみようとひとまず出演している次第。話し下手でしどろもどろな私のトーク部分はだいぶあれですが、しばしご容赦を。

いずれは、私がこよなく愛するAMラジオ番組のトークバラエティで、わしゃわしゃとパーソナリティのそばで笑い声を立てる構成作家のような役回りに転じて番組づくりに参加したいかなぁ(心臓にも良さそうである)。私はラジオをPodcastでよく聴くので、映像ではなく声だけのPodcast番組もいいなぁと思っているのだけど(心臓にも良さそうである)。

でも今回のメンバー的には映像づくりを本当に楽しんでいて、その笑顔がまぶしいので、この番組は映像のほうがいいのだろうなぁと思ったりしている。そうするとやっぱり、狙いどころは裏方の構成作家もどきか。

それにしても、まさか自分がYoutubeの番組に出るような事態が訪れようとはまったく想定外で、人の出会いとは面白いものだなと思う。他者との出会いやふれ合いによってこそ、自分というのは変わっていったり、新しくなっていったりするものだなと。

zoomでのオンラインミーティングも初めて体験させてもらったし、slackでのやりとりも彼女らの提案で初体験。新しいほうへ、面白いほうへ、私を導いてくれる。そういえばメッセンジャーでのやりとりで「了解」を「りょ」と略す軽快な若者コトバを目にしたのも今回初。本当だったんだ!と。

やはり春というのはいろんな人にとって節目の季節で、周囲をみまわしても、いろんな人がいろんな節目を迎えているんだなと、特に今年は思うところがあった。我が身を振り返ると、わかりやすい変化がない状態をわりと長く続けている気がするんだけど、ここひと月ほどは、わりといろいろな人と会ったりおしゃべりする機会に恵まれて、すこし凝り固まっていたものが融け出している感じもする。変化を感じられるのは、健やかなことですな。

あと、行き当たりばったり感はあるけど、自分の選ぶ活動ってやっぱり「作り手を支援したい」という自分の軸となるものにはなっていて、そういうところに自分の人生の時間を使っているのを事後的に認識して、なるほどなぁと思ったりするのだった。老子の「無為自然」である。

さて、そんなわけでYoutube番組「とうふメンタルラボ」の第1回「とうふメンタルラボとは?はじめての企画会議」 。こちらに公開されました。たぶん週1ペースくらいで更新されていくかなと。おしゃべりをエンターテインメントにするっていうのは、やっぱりプロの技。CGMとしてコンシューマーの作るコンテンツの意味性は、もう少しいろんな種類の価値を寄せ集めて成り立っていくものかもしれないと思っている。続けていく中で見えてくる、そういう意味を一つひとつ丁寧に感じとりながら、関わり方も柔軟にやっていけたらいいかなぁと思っております。お時間に余裕あるとき、一息いれたいときなどに、よろしければ…、お手柔らかにみてやってください。

首謀者るみちゃんの紹介記事:父の自殺。母との関係。生きている気がしなくなった17歳【竹内瑠美さん】┃Reme(リミー)

2019-03-15

キャリア支援をテーマに自分ができること

最近、企業さんから「社員の自律的なキャリア開発」に関するご相談をいただいたのを契機に、キャリア支援をテーマに自分ができることを、サービスや講座の形に落とし込んで整理してみた。

畑を耕すように、DropboxPaperに足を運んでは文章をしたためていって、今の状態。一覧ページから、それぞれの詳細を案内するページにとべるようになっている。

[一覧]クリエイティブ職向けキャリア支援

こういうのを一般人がテキスト打つだけで発信できてしまう時代って、なんてありがたいのか。(それが魅力的にきちんと伝わるかは、また別の問題があるけれども…)

「パッケージではなく、オーダーメイド」を基本に活動しているので、最終的に落とし込む形は相手に応じて手作りしていくのに変わりないけれど、それだけじゃどんなことを頼めそうなのかが一向に伝わらないよなと思い、仮で「形」を与えてみた感じ。

キャリアってテーマは、すごく個別的なものだし、答えのないものだし、誰かが(まして私が)大上段に構えて説くような話でもない。「研修」や「講座」として扱うことにそもそも違和感をもつ方もあると思う。

でも、ちょっとステレオタイプな「研修」「講座」イメージを捨てて、「一人だけで考えて結論しないキャリアデザインの意義」みたいなところにフォーカスをあててみると、こうした支援の形にも一定の価値を見いだせるかなと。

「考察:自己理解を能率化するアプローチと支援」を書いているときに改めて思って言葉にしてみたのは、こんなこと。

自分が大事にしたいことや自分に合うことは自分にとって当たり前のことであり、また抽象的な概念のため言葉にしづらい(=意識化しづらい)。自己理解は、いきなり自分の内面に問いただすより、一旦外側から検討材料を調達して取りかかったほうが能率化する面がある。

キャリア開発の考え方や支援ツールなど、あれこれ触れていると、例えば「どんなライフスタイルが好みか?」みたいな問いに30項目以上の「〜な生活」という選択肢を列挙しているツールとかあって、そういうリストに「これはいい」「これは自分の価値観から遠い」なんてざくざく反応を返していくと、ピックアップした「〜な生活」から、自分てこういうライフスタイルを好む人間なんだなって浮き彫りにできたりする。なんだかなって気もするだろうが、並んでいるからこそ優先順位も自ずと浮かんでくるというもの。

与えられた選択肢を一つ選んだら、それを自分の答えにしなきゃいけないって縛りも、どこにもない。あくまで自分を理解するための道具にすぎないのだから、「これと近いんだけど、自分の感覚はこれとちょっとニュアンスが違って、こんな感じなんだよなぁ」というところから、もっと直接に自分をつかみにいったらいい。近しい選択肢から、解釈を広げたりずらしたりして、自分のことを掘り下げていくことができれば能率的。たとえ「1つ選べ」という問いかけだったとしても、2つ3つ選んで、そこからオリジナルの1つが頭の中に浮かび上がれば結果オーライだ。

自分がこれを選んだ理由、あれを選ばなかった理由はなんだろうというふうに、選択理由の説明を試みることで、思考の旅はいくらでも膨らましようがあり、そこから自分の理解が深めることもできる。

ライフスタイルからもう一歩具体的に「仕事をする上で大切にしたいこと」リストなんかも、いくつかメソッドやツールを見比べてみると、仕事観って一括りにいってもいくつか切り口があるんだなぁみたいなことが見えてきたりする。

私がみてとったのは、次のような3つの切り口だ。
●「〜な仕事をしたい」「〜の役割に従事したい」(仕事内容、役割)
●「〜な働き方をしたい」「〜な会社・環境で働きたい」(働く環境・スタイル)
●「仕事を通じて〜を得たい」「〜のために働きたい」(働く目的・獲得したいもの)

でも、ここの「〜」に自分がびびっとくるものを思いつくのが、一人でやっているとけっこう難しい。ちょっとニュアンスが違かろうと、一旦は外から選択肢を提示してもらって、それをきっかけに自分の言葉を探していくほうが、アプローチとしては能率的かなって感じがする。

一人で部屋にこもってウーンって考え出しても、なかなか言葉が出てこない上、思いつくものに網羅性もないから、いつまでも考え終える蹴りをつけられなくてズルズルしたりする。ある程度、隅から隅まで行き渡ったリストがあると、とりあえず一定の網羅性をもって検討できる。

まぁ別に必要ない人・時期には全然必要ないのだけど、何かを取捨選択・意志決定しなきゃいけない局面では、自分のことを深く理解しているっていうのが、ものすごく判断を速く、楽にするし、間違いがない、あるいは後悔がない。

変化の激しい時代・業界では、数年・数十年先の世の中を占うより、自分のことをよく理解しておいて、世の中が変化するとき、だったら自分はこう動くという判断がすぐ出るようにしておくほうが賢明かもって見方もあると思う。

ともあれ、外部から与えられる言葉は、自分の脳を働かせる「刺激」として受け止めて、刺激を受けた自分がどんな「反応」を返すかを観察して、観察したプロセスや結果を丁寧に解釈すれば、そこにこそ大事な情報が生起する。そういうふうに、あくまで一時的&一次的な道具としてつきあうことを大事にできれば、こうした支援ツールも有意義じゃないかと思う。

私もそういうスタンスで、能率化する支援ツールの一つとして役割を果たせたらなと思う。キャリアカウンセラーというのも、こうした言語表現のあれこれを、一般の人よりは多く使っている(かもしれない…)ので、対話の中で解釈を広げたりずらしたり、フォーカスを絞りこんだり考えを精緻化する際の話し相手に使えるかも。

また、自己理解を支援するツール選び一つとっても、いろいろ見比べていると、フォーカスのあて方が異なるから、適切な道具選びもサポートの一つだ。先の図「自己理解を能率化するアプローチ」では、下のように切り口を分けてみた。
●性格
●希望のライフスタイル
●仕事の価値観
●適職
●環境/条件

その人が自分の何を知りたいのかを見定めて、話を聴いたり、整理したり、深掘りしたり、一緒に探索したり、必要なら適切なアセスメントツールを紹介したり、その解釈をサポートしたり。そういうことをやっていけたらなと思う。

DropboxPaperにまとめたのは、半分は自分の考えの整理用に起こせて良かった感じ。もう半分は、自分でお客さんに案内するときの手元資料として使えたらというイメージだけど、どこからでも見られる状態になっているので、この会社で興味あるかも?といったお相手にいつかどこかで巡りあったら、ぜひこちら思い出してやってくださいませ。

2019-03-05

「6つのホランド・タイプ」からの自己理解ミニワーク

キャリアの著名な理論家の一人にジョン・L・ホランド(Holland,J.L.)という人がいて、「6つのホランド・タイプ」を提唱した人として知られる。

ホランドは人の基本的性格を6つのタイプで表した。職業や職場、大学の専攻科目といった環境も、同じ6つのタイプで説明できるとして、これがマッチすると、個人はその環境に満足と安定を感じるし、環境(例えば職場)に対する貢献度も高まると考えた。

6つのタイプが表す基本的性格というのは、人の興味や能力、価値観を表すものだ。

- 現実的(R: Realistic)
- 研究的(I: Investigative)
- 芸術的(A: Artistic)
- 社会的(S: Social)
- 企業的(E: Enterprising)
- 慣習的(C: Conventional)

これには2つの前提が置かれている。
◆人は通常、「3つの性格タイプ」の組み合わせとして表すことができる
◆どれか1つが強く、あと2つのタイプはそれほど強くない

ということで、自分はどうかなぁというのを検討するワークシートっぽいものを作ってみた。ここで自分が選ぶ3つ(強い1つ+それほど強くない2つ)で、自分のスリー・レター・コードを導き出して自己理解に使うとよろしい、ということで、次のような案内テキストを入れて、簡単なシートにしてみた。

「6つのホランド・タイプ」を用いて自己理解を深める

次の6タイプの【好む活動】【高い能力】【性格特性】を読み比べ、自分に「最もフィットするタイプ」を1つ選んで◎を、「どちらかといえばフィットするタイプ」を2つ選んで○を記し、「これは違う」と思うタイプには/を引いてください。

ちなみに、この6つは適当に並んでいるわけではなく、六角形の角が隣り合っているものは類似性が高く、離れているものは類似性が低いというふうになっている。

実際、自分でやってみると、一つおきで3つ選択する結果となり、バラバラ感が半端ないのだけど…。自分に照らして吟味してみると、人間とは複雑なものであるな、としみじみ思う。

昔やったときと違うなぁ、ホランドのタイプは後天的に身につけた性格を前提にした理論なので、やっぱり変化するんだなぁというふうにも思った。

また、それぞれのタイプの説明を読むと、この部分はそう思うんだけど、この部分は違うみたいなところもあって、3つ選ぶとなると難しかったりする。

でも、「そこをなんとか!」と一人芝居で押し切って、「えいっ」と、Aランク1つ、Bランク2つに内々で決めてみるのも、なかなか面白い心の体験である。やっぱり居心地悪いと思えば、変えてみてもいい。誰も文句は言わない。

一方で、タイプ分けにこだわらず、タイプごとに書かれている【好む活動】【高い能力】【性格特性】から、それぞれに気になる、自分っぽいキーワードを拾ってみて、自分のオリジナルな人物像をえがき出してみるのも良い。自己理解を深めるためにやっているのだから、タイプ分けにこだわる必要はない。

そういうことをぶつぶつ考えながら、私が勝手に思いついた軸としては、タイプ分けがうまくできないにしても、次の観点ではわりと「自分は、どっち寄りか」って考えやすいかなというもの。私が勝手に思いついただけの軸なので、ご参考までに(これもシートの下のほうに入れておいたけれど)。

自分は、どちら寄りか
◆人を相手にする仕事   ⇔ 物を相手にする仕事
◆チームで仕事をする   ⇔ 一人で仕事をする
◆実体あるものを扱う   ⇔ 概念・抽象的思考を用いる
◆ゼロからイチを生み出す ⇔ 1を秩序立てて軌道に乗せる ⇔ 10を守り運用する ⇔ 10を100に育てる・改善する

自己洞察に使えれば、まぁいいのである。

2019-02-12

「すごくできる人」の講義を聴くだけでは、なぜ「できる人」になれないのか考

別にどこかで講演したとか取材を受けたとかじゃ全然ないのですが、

「すごくできる人」の講義を聴くだけでは、なぜ「できる人」になれないのか

という問いに対して、自分なりの回答をテキストに起こしながら整理してみようと思い、あれやこれや考えていたら、上のリンク先のような1ページができました。

話の流れとしては、「すごくできる人」の講義を聴くのはムダなのかっていうと、そんなことは全くなくて、これこれこういう価値があるんだけど、学習活動において「講義」って決して万能じゃないから、講義の生み出せる効果と限界を知って、「できる」ようになるまでを射程に入れて、講義を足場に、その先の学習活動をマネジメントしていく必要がある。そのステップとしては、学ぶ側にとっても、育てる側にとっても、こういうコンセプトでいくといいんじゃないか、というような話を展開しています。

読者想定としては、こういう方に何か参考にしてもらえるところがあればと。
●セミナーや勉強会、研修で「すごくできる人」の講義をよく聴いている方
●周囲から「すごくできる人」と思われていて、講義をよく引き受けている方
●「すごくできる人」を講師に招き、セミナーや勉強会、研修を企画している方

なのですが、これがどうにも、ひとりで脳内ぐるぐるした結果の産物なので、人にシェアして意味がある話になっているのか判別つかず。

ただ最近、日経クロストレンドのFacebook投稿で、レイ・イナモト氏が黒いTシャツ姿で「不完全でも世に出すスピードこそものを言う」と頻繁に語りかけてくるので(かって解釈…)、とりあえずネットの片隅に置いてみました。

素朴なテキストがメインですが、何かしら読んでくださった方の学習活動なり育成活動の一歩を進めるお役に立てば幸いです。

2019-02-01

専門職のチームの置き方、まわし方

連載しているWeb担当者Forum「Web系キャリア探訪」第9回では、メルカリ樫田光さんのチームの作り方・育て方の話も、じつに聴き応えがあった。

チーム論やリーダー論として他所で耳にしたことがあるノウハウでも、これだけ実践できていて、これだけ成果につなげている人はそうそういないのではないか。最終的には、樫田さんの人間力…みたいな話にしか着地できないんじゃないかって気もするほどだったけれど、チームの作り方・育て方について考えさせてもらったことをメモしておく。

組織構造モデルでいうと、組織を「機能別」にするのか「市場別」にするのかって話がある(後者は「事業部制組織」っていうのが一般的だけど)。

●機能別の組織(横軸)
研究開発、製造、販売、営業といった組織の機能、職種/職能ごとに組織を分けるやり方

●市場別の組織(縦軸)
製品・サービス、地域、顧客/顧客の業種といった市場/事業部ごとに組織を分けるやり方

どちらも一長一短、事業の規模とかステイタスとか、会社全体の戦略とか、現在どういう人員で構成されているかとか、いろんなことを考慮して判断するのでしょうけれども。

メルカリのBIチームは、樫田さんの手腕で、この2つのいいとこどりをした「マトリクス組織」的にうまく配備・機能させているんだろうなぁという印象をもった(素人目)。

●マトリクス組織
機能別/市場別などで縦軸・横軸の組織構造を併存させ、メンバーが縦・横2つに属して活動する組織

樫田さんが2018年4月に登壇された「Data Analytics Summit 2018」のスライド資料(77ページ目)によれば、メルカリは会社の大枠としては「事業」「地域」といった市場別組織で構成されているよう。あるいは、もう少しタスクフォースなりプロジェクトっぽいチーム編成かもしれないが。

参考:What makes Mercari Data-Driven(77ページ目)

こうした組織の中でBIチームは、データ分析に長けた「職種」でメンバーを集めてチームを編成し、組織横断的な活動を行っている。社内に広がる大小さまざまなプロジェクトに入って職人的に活動する体制。この「社内」とは、プロダクト開発部門の各チームにかぎらず、経営・広報・マーケティング・ファイナンスなどのバックオフィスも含めて活動しているもよう。

樫田さんいわく「谷に突き落とすから勝手に育ってくれというタイプです。ただ、どの谷に落とすかは、その人のスキルに合わせて考え」ているなど、自分のマネジメントスタイルも心得つつ、つかず離れず丁寧に、メンバーが充実感と成長実感と責任感をもって働いて成果をあげていく環境づくりをしている。

◆独立性高い機能軸のチームを作って、チームマネジメントの品質は自分が担保
◆各メンバーには本人の能力が活きる&伸びる役割や案件を用意
◆メンバーの席は現場に置き、各現場で各々の専門性を発揮できる業務環境を与える
◆メンバーが席をおく各現場の統括者との関係づくりも怠らず、そこから各現場の課題を都度つど持ち帰るのも抜かりなく
◆メンバーとは週1で1on1を30分もって、今何をやっているかを把握するに留まらず、各現場から持ち帰った情報など踏まえつつのアドバイス
◆チームで週1ミーティングを設けて、分析の知見共有&レビュー

そして当然ながら、自身が掲げた「組織がデータや数値を使って正しく意思決定できるようにすること」(わかりやすい)というBIチームのミッションに基づいて、社内の信頼を積み上げていっている。突飛なことは何もないけれど、明快な軸を打ち立てて、これを丁寧にやり続けて確かな成果をあげていくって、スーパーマンくらいじゃない?ってくらいのハイパフォーマーだ。

データ分析の専門家として「自走」できるメンバーを採用できている前提あってのチーム作り・育て方なので、最適解は環境ごとに異なるだろう。

でも、高い専門性と、頻繁に知識・技能のアップデートを求められるような専門職チームをマネジメントする人たちには、BIチームのあり方にいろいろ参考にできるところがあるかもな、あったらいいなと思いつつ、今回の記事を送り出した。

2019-01-31

「Web系キャリア探訪」第9回、メルカリのデータ分析チーム

Web担当者Forumの連載「Web系キャリア探訪」第9回が公開されました。今回は、メルカリのデータ分析を預かるBIチームのお三方をインタビュー取材。

メルカリのデータ分析チームが熱い! 個性的過ぎる3人がメルカリを選んだ理由

言わずと知れた日本最大のフリマアプリ「メルカリ」ですが、メルカリ社として企業の顔をみてみると、2013年のアプリリリースから短期間に日・米で1億ダウンロードを突破、国内だと7,500万ダウンロード、利用者数は月間1,100万人、累計流通額は1兆円と飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長中の注目企業です。

組織としても「すごい人たちの集団」感がスゴイわけですが、その中の人たちは、どんな感じで採用されて、どんなキャリアの人で、どんなものの考え方をして、どんなふうに働いて生きているのだろう…というのを興味深くお話し伺いました。

スゴイの一言でくくっちゃうと、へぇほぉははぁ…で終わっちゃいかねないのですが、それぞれのキャリアの歩みを丹念にたどると、いろいろなエッセンスに分解して読むこともできます。ご自身のキャリアやチーム作りの参考になる情報を拾い読みしてもらえたらなと思っています。

というのも、「キャリアモデル」っていっても現代では、「1社40年をどういう道筋でたどったか」ってわかりやすいパターンを1人格に求めるのは無理がある転職当たり前の世の中。自分にぴったり感のあるキャリアモデルを探しまわるより、いろんな人のキャリアの歩みから、自分が参考にしたいエッセンスをパーツ単位で取り入れたり、これは自分にそぐわないなぁと思うような人の価値観にふれたときも、それをもって自分の価値観を知る機会に活かすくらいがちょうどいいだろうと思うわけです。結局はキャリアって、望むと望まざるとに関わらず自分オリジナルにならざるをえないわけだし。そこから先の個別的なサポートをキャリアカウンセラーとしてできたらってところもあるのですが。

閑話休題、今回の取材は「分析力」を強みにしている面々とあって、ご自身のキャリアについても、その分析の妙が話の節々に窺えました。「ちょっと自分を離れたところから見てみて、こう考えた」という話が随所にちりばめられているように思います。

石田さんについては本編で書きましたが、樫田さんの「自分の今の希少性ってなんだろうな」って視点をもって考えてみることとか、「インプットとアウトプットを交互にするのがいいから、次はインプットだ」とか、新保さんの「5年後には来る」という市場の読みとか、「技術を極めるよりも良いプロダクトを作る方に興味がありました」という自己分析も。

後から振り返ればってことも含むかもしれませんが、自分が考えたこと、結論を出した根拠のようなものをすごく分かりやすい言葉で語れるのは、人に伝えられるレベルに自分の中で意識化している証拠だなぁと感服。

お三方を通じては、力みすぎず、キャリアデザインしすぎず、人との出会いや機会を活かして自分の世界を広げていく柔軟さ、オープンさを心地よく感じた取材でした。

編集後記「二人の帰り道」の森田さんのお話も二重三重に染み入ります…。よろしければ、少しゆったりした時間に、ぜひご一読ください。

2018-12-21

「Web系キャリア探訪」第8回、転職から1ヶ月は地図をつくる

インタビューを担当しているWeb担当者Forumの連載「Web系キャリア探訪」第8回が公開されました。今回は、セールスフォース・ドットコムのエバンジェリスト熊村剛輔さんを取材。

44歳、転職は10社目。サックスプロ奏者からIT業界へ転身した男の人生

「転職先では、まず地図をつくる」って、概念的だけど分かりやすい、いい表現ですよね。自分で、自分の居場所を作るのって大切。1ヶ月って期間を設定しているのも、なるほど!というか、さすが「プロ転職家」。

新卒社員として同期と一斉に入社した場合は、ある程度お膳立てされて段階的に居場所や役割を与えてもらえるかもしれないけれど、転職した場合や、新卒でも一人でポンと入った場合は、自分で立ち回って、いろんな人にコミュニケーションをとりにいって、まずはその世界の地図をつくるのが大事。

「地図をつくる」のって、ただ静かに様子をうかがって観察した結果をマップに描き起こすだけじゃなくて、自分のこれからの人間関係を作っていく極めてアクティブな活動を内包しているところが見逃せないポイントだと思う。

そうした地図づくりから、職種や階級などの組織に与えられた役割にかぎらず、個人としてここでどう役立てそうかを自分で模索したり開拓していく能動性が、転職には欠かせないと思う。

また、そうやって手探りで自分の役割をたぐりよせていく自律的なキャリア形成が、21世紀の標準的なスタンスになっていくとも思っている。

私は(ほぼ)最初の転職のとき、これができなくって苦労した。もう20年近く前のことだけど、前の会社を辞める決断をして送り出されるとき、お世話になった人たちから「あなたならどこにいっても大丈夫よ」なんて言われて、自分も新しい環境への順応性は高いほうじゃないかと、どこか高をくくっていたのかもしれない。

自分で自分の役割をつかんでいく意識、自分の使いものにならなさ加減を直視して不足分を恥さらして身につけていく根性が希薄だった。これで転職してから半年くらいは、夜中だけ出てくる蕁麻疹に苦労した。

今振り返れば、20代のうちに谷に落ちておいて軽傷で済んで良かったなぁと思う。あぁそうか、自分で自分の役割や居場所って作っていくんだって大きな学びを得られて、その先の転職時に蕁麻疹が出ることはなく、自分で自分の働きどころを形作っていったり、自分の不足するところを正面から受け止めるスタンスが前提になった。

さて、本編の話。「エバンジェリスト」なんていうと、自分のキャリアとは結びつかないかなぁという印象をもつ方が大半かもしれませんが、熊村さんの転職歴は、なんと10社。ベンダー側と事業会社側、いずれの立場でも複数の企業を経験されているので、いろんな方に、自分のキャリアとの共通項を見いだせる部分はあるかな、とも思います。

また、居場所を変えているからこそ見えてくる熊村さんの首尾一貫した仕事への向き合い方には、刺激をもらったり共感するところも、いろいろあるかもしれません。

一人の人間の人生である以上、それがどんなに変化に富んだものでも「1本のシナリオ」にまとめられうるものだと私は思っていて、それぞれにどんな意味をもたせ、前の経験と後の経験にどんな関係性を見出すかも、本人次第。

意味づけは自在であり、また自分次第であり、自分の意味づけにこそ意味がある、とも思う。だから、一つひとつの経験を編みこんでいって、そこに自分にとっての価値を実感できることが、きっと何より大事なことなんだと思う。

熊村さんは、自分が何を大事にしてどこでどう働くのかに自覚的で、丁寧に言葉に起こしてその辺りをお話しくださっているので、自分のキャリアの解釈を広げてみるのに良い刺激をもらえるかも。ご興味ございましたら、ぜひご一読くださいませ。

2018-11-30

「Web系キャリア探訪」第7回、アフィリエイトオタクの生きる道

インタビューを担当しているWeb担当者Forumの連載「Web系キャリア探訪」第7回が掲載されました。今回はアフィリエイト愛に満ち、その愛情を遺憾なく発揮して活躍する、フリーランスの鈴木珠世さんを取材しました。

アフィリエイトオタクが45歳過ぎてフリーランスに「会社員より今が一番楽しい!」

みずから「アフィリエイトオタクなんです」と切り出す、アフィリエイト愛に満ち満ちた女性。私は「のめりこむ」ということがなかなかできないタチなので、オタクをサポートする役まわりなのだと開き直って人生を送っていますが(なので周囲にはオタクが多い)、オタクがそのテーマについて熱心に話すさまというのは、その人に内在する生命力が満ち満ちている感じがあって、いいですよね。

なんてこの人の人生は充実しているのだろうかと、あふれだすエネルギーをいくらか分け与えてもらえたような、ありがたい気持ちになります(テーマにもよりますが…)。なので鈴木さんのお話を聴いていて、すごく元気をもらいました。

よく「Will/Can/Must」の円の重なるところに、自分の仕事領域を見いだすなんていうけれど、「オタクがそれを生業にする」というのはその理想を地でいく感じの“最強”感があります。

Willは「自分がやりたいこと」、Canは「自分ができること、得意なこと」、Mustは「自分がやるべきこと、やらねばならないこと」といった言われ方をします。

Mustは、社会的なニーズとか、組織から求められることとかって言われたりもするけれど、私は3つ目の円を「そうせずにはいられない、やるべきと突き動かされること」とか、「自分がその活動に意義や価値を感じること」っていうふうに捉えています。それが社会的なニーズ(とまで大仰にとらえなくても、他の人の役に立つこと、助けになること、人を喜ばせたり豊かにすること)に通じている感じ。

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「オタクがそれを生業にする」っていうのは、この3つの円の重なりの、深い、深ーいところに仕事があるってことだよなぁって気がして(必ずしもそうじゃないのかもしれないけれど)、こりゃ最強だなって尊いものに感じられます。

私はオタクという人生を生きられる身の上ではないと割り切っているけれど、オタクのサポーターとして、こういう円の重なりにオタクが自分の仕事を見出し、有意義に働ける組織づくりとか社会づくりには貢献できたらいいなと思っています。

オタクオタク繰り返すと、あれだけども、ギークとかのほうがいいのか。いや、何かを好きで、得意で、それに並々ならぬ価値を見出している人というのか。そういうものを見出している人が、それを仕事にして、それゆえに充実した人生を歩めたら、本人もすごく幸せだし、社会もきっとおおいに恩恵を受けられるよなぁと。

そういう人たちが働きやすい環境づくりって、社会としても、組織としても大事に育んでいったら強いと思うのですが。こういう「半端ない人」たちが、残業時間を気にして、組織にばれないように隠れて仕事するとか、突出してすごいんだけど、はみ出し者扱いで評価されないとか、いろんな規制がきつくて働きづらいから会社辞めちゃうとかじゃなくて(いや、独立したい人が独立するのはいいことだと思っているけれど、組織に残る選択肢もあったほうが自由だという意味で)、そういう人たちが会社に所属し続けて、仲間を引っ張っていってくれたり、すばらしく純粋な生命エネルギーを周囲に振りまいてくれるような組織改革/働き方改革もあっていいんだろうなぁとか思います。

そんなこんなは、編集後記の後のつぶやきということで。ぜひ本編をお楽しみください。ほんとうの編集後記にあたる「二人の帰り道」は、本編に寄せています。最後までご一読いただければ幸いです。

2018-09-28

「Web系キャリア探訪」第6回、転職から移籍へ

Web担当者Forumの連載「Web系キャリア探訪」第6回が掲載されました。今回はインフォバーンの田中準也さんを取材。

6回の転職はジョブホッパー?「広告業界で部署異動してるだけだよ byジュンカム」田中準也氏のキャリア観

JR東日本企画で14年間勤めた後は、電通、トランス・コスモス、メトロアドエージェンシー、電通レイザーフィッシュ、インフォバーンと転職を重ねていますが、田中さんからすると「転職」というより「部署異動」のような感覚と言います。

この感覚、近しい業界に身をおいて同時代に働いてきた私も共感を覚えるところがあります。私の場合「○○業界で部署異動している」と思えるほど大舞台で働いている感覚はもちえないのですが、ここ20年ほど働いてきた中で、
1.企業間の壁が薄くなり、
2.企業間・企業と個人のコラボレーションが活発になり、
3.プロフェッショナルとしての個人の存在感が増していって、
4.人材の流動性も高まってきた
のは大いに肌で感じるところです。

数年単位で会社を渡り歩き、新しい職場で新しい仲間と新しいチャレンジをする人を見るにつけ、「転職」というより「移籍」という言葉のほうがフィットするなぁなんて思ったりしていました。

さて、今回の田中さんは、ネット黎明期から、その前線で仕事経験をもたれてきたわりに、「デジタルを主戦場にしよう」と決意された時期は、けっこう最近なんだなというのが驚きでした。

90年代に一度ネットの仕事に足を踏み入れた開拓者精神旺盛な当時の若者って、周囲の大人にビジネスにならんとか言われて理解を示されなくとも、どんどんデジタル、インターネットのビジネスに邁進していった印象があって。

そこでデジタル一辺倒とならずに、アナログ×デジタル双方の見通しよいところに立ち続けて、また双方の前線に立ち続けてきたところに、田中さんのキャリアのユニークさが際立つのかなと思ったりしました。

また、それは確かな田中さんの志向の表れであり、ご自身が選んできた道であり、そこに惹き寄せられるように仕事の誘いが都度やってきたと考えると、必然と偶然の絶妙なバランスの中に田中さんのキャリアが成り立っているように感じられます。

確かな志しや自律心をもってキャリアを舵取りするデザイン性も感じられれば、未知の可能性や人の縁に人生を預けるドリフト性も感じられて。どっちに依らずバランスをとりながら進んでいくのが人の道かなぁなどと思ったりしました。

というのは私の勝手な蛇足ということで、ぜひ本編をお楽しみください。編集後記にあたる「二人の帰り道」まで、ぜひご一読いただければ幸いです。

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