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2017-11-21

活動をつなげてキャリアを編む

週末ラジオ番組を聴いていたら、お薦め図書を紹介する特集で、お笑いコンビ・カラテカのボケ担当、矢部太郎さんのコミックエッセイ「大家さんと僕」(*1)が面白いという話があり、そのまま買ってしまった。

矢部太郎さんは「実家のテレビで何度か見たことあるな」「お笑いの人だな」「ちょっと頼りなげで人の良さげな」という、おぼろげな記憶しか持っていなかったのだけど、4コマずつのコミックエッセイならさくっと読めそうだし、のんびりゆったりほんわかした空気感を味わえそうなのが今欲するところにぴったり。しかも調べてみたらKindle版があったので、すぐさまダウンロードして読み始めた。

正解だった。すばらしく心地よい読書時間&読後感。最近ごつごつした本を読むことが多かったので、ここまで気を緩めた読書体験っていうのもありなのか…と、何か許されたような気分になった。

プロフィールをみると、矢部太郎さんは40歳で私と同世代。独身で、新宿区在住。87歳の女性(大家さん)が1階に住む二世帯住宅の2階に、仮住まいしている。

引っ越してきた当初は、大家さんとの距離の近さに戸惑うも、毎月家賃を手渡しした後にお茶をご一緒するうち心を通わせて、すっかり仲良しに。一緒に伊勢丹にお出かけしたり、九州まで飛んで鹿児島を旅したり。

この大家さんが、たいそう品のある浮世離れした女性で、挨拶は「ごきげんよう」、好きなタイプを尋ねれば「マッカーサー元帥」、若かりし頃の彼女の思い出話などがあれこれ出てきて、二人の日々の会話がじんわりと染み入る。

この中で、彼が「今の仕事続けてていいのかわからなくなって来ちゃいました…」と、悩みを吐露するシーンも出てくる。

テレビのトーク番組に出演しても、滅多にない機会に緊張して舞い上がってしまい、思いっきりスベってしまう。たくさんの芸人が集まる番組で、盛り上がる会話に全然入れず、前に出られず、何もできないまま時間が過ぎていく。

そんな彼に、大家さんがなんて応えるかは、お楽しみということにして。

ここを読んだときには、ことに深い味わいがあった。彼がそんな思いを抱えていた日々が、彼の確かな手腕によって「僕の悩み」というコンテンツになり、今私はそれをお金を出して読んで味わっている。この本たいそう話題で、売れてもいるらしい。本屋さんに行った時も、目立つところに置いてあったもんなぁ。

この人はそうやって、確かに、丁寧に、人の心に届くものを形にしているんだなと。

お笑い芸人から漫画家へ、職業や職種という既成概念に縛られず、できること、やりたいこと、やるべきと突き動かされることに、「活動」という単位で一つひとつ丁寧に取り組んでいくこと、形にして届けていくこと。

これは、転換期だか過渡期だか変革期だかにある現代人にとって、すごく自然な行いに感じられるし、業界は違えど同時代を同世代として生きる同士として共鳴するものを感じて、心強く思った。というか、実際それができているのって、すごいなぁと感服した。

いつ無くなるとも変わるともしれない職種名や役職名という既成概念に振り回されるより、「活動」単位で自分が有意義だと思うことをやっていって、いくつかの活動を終えたとき振り返ってみるのが、たぶんちょうどいい。

そこに自分のやってきたことの確かな軌跡があり、それを選んだり除けてみたり、つなぎ合わせてみたり、角度をつけて置き直してみたりすると、ストーリーのようなものが浮かび上がって見えてくる。これまでの道筋をストーリー立ててみていると、この先自分が進みたい進路も、なんとなく読み取れるものが出てきたりする。

そういうのが、不確かそうで、けっこう手堅い自分キャリアの歩み方かな、などと思っている。一つひとつ、有意義な活動を丁寧にしていくこと、だよなぁ。そう励まされる本でもありました。

*1: 矢部太郎「大家さんと僕」(新潮社)。特設サイトもあり。

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