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2016-05-06

「ヒアリング」というライブパフォーマンス

一般に研修屋さんというのは、4月に新入社員研修が集中して、そこが一年で一番の書き入れ時と聞くが、私は研修屋と呼べるほどおっきくビジネスしていない&実務的なテーマに偏った研修を扱っているからだろうか、どちらかというと期があけて各社が新体制で動き出した後、ちょっと一段落した今頃に、現場のマネージャーさんから引き合いをいただくことが多い気がする。

それで今時分は、下調べしてヒアリングに行って提案書を作ってプレゼンしたりだとか、受注が決まった先で現場の方々に業務ヒアリングさせていただいて講義や演習を設計したりだとか、下ごしらえをしている。4月に研修本番があった案件も、特に4月限定の新卒ものというのではないので、それの見直しをかけて5月以降の準備をしたり。

というので、会社にこもってデスク前であーだこーだやっている時間も長いのだけど、客先に出向く機会もままある。これが一向に慣れることなく緊張する。慣れて緊張しなくなるより、慣れずに緊張し続けていたほうがいいと自分では割り切っているのだけど、とはいえ頻繁に緊張に向き合うわけだから大変は大変だ。

今日も客先にヒアリングに行く機会をいただいていて、考えてみればヒアリングってプレゼン以上に緊張する。プレゼンでも打ち合わせでも、お客さんを訪問するときは何しに行くのでも緊張するのだけど、ヒアリングというのは、また格別だ。

その理由の一つに、その後こちらが作って出すものの精度に大いに影響を与えるというのがある。初回のヒアリングであれば、そのヒアリングの出来不出来によって提案書の質は大いに変わるし、受注後に現場の皆さんに業務や参加者の実際をヒアリングする際も、その巧拙によって実際に提供できる研修の中身の精度がもろに影響を受ける。

加えて、結局のところヒアリングというのは、ライブパフォーマンス力が大いに問われるというのがある。いろいろ下調べや準備はして臨むものの、これで万全ということはなく、その場のやり取りの中で出てきたものに対して、どれだけ即時的に反応しながら話を深められるか、引き出せるかというのは、結局その人間のもつ器によるところが多分にある。

現場で求められる瞬発力については、自分が苦手とすることを大いに理解しているので、下調べしたり、事前にお客さんと同等かそれ以上にあれこれ考えておくことによって、「それは私も考えてみたのですが…」と即時対応できるよう努めている。あとはまぁ、これまでの経験も総動員して、その場で考えられるかぎりの最適解を出す。

として、この「人間の器」については、事前の準備をいくらやってもどうしようもない。ふだんの自分づくりが物を言うというか、準備万端ということがない。ゆえに緊張も避けられない。いや、いいんだけども。つまるところ、今の自分ができることを、やるっきゃないということだわなぁと。

その会社の問題意識や目指す先が何であるのか、対象となる社員の方の状態はどうであるのか、研修という施策のゴールイメージをどのようにみているのか、実施に際して制約・前提条件は何であるのかなど話を聴きながら、最も効果的で効率的で魅力的な育成アプローチを模索する。

模索しながら話を聴きこむわけだけど、話を聴きながら相手が見えてくるわけなので、どうしたってライブのパフォーマンス能力が問われる。

下の一文は「哲学」について言及したものだけど、これを読んだときに、なんとなくしっくりいく感じをもった。

方法は、ある意味では対象のほうがいわば強いてくるものだ。あるいは、対象との接触のなかではじめて見えてくるものである。対象にかかわる前に方法があるわけではない。(*1)

そうなのだ。日頃からいろんな方法論を学んだり、このお客さんにはこんなやり方がいいだろうかと訪問する前に下調べしたり模索したり、それ自体は決して無意味なことと思わない。けれども、結局行ってみて話を聴いてみて、「対象」たるお客さんが見えてきたときに、「対象」のほうが、あるべき「方法」を強いてくる。「対象」がよく見えれば見えるほど、こうしたらいいんじゃないかという「方法」が鮮明に描き出される。いいヒアリングができると、こうすべきという「方法」はおのずと浮かびあがってくる。逆に、「対象」に深く話を聴きこむ前に、「方法」をこれと定めることはできない。

だからこそ、ヒアリングの緊張から解放されることはないわけだけど、まぁなんとなく腹に落ちたところで、今日も頑張ってこよう。中心を外さずに聴くのだ。

*1:鷲田 清一『「聴く」ことの力―臨床哲学試論』(ちくま学芸文庫)

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