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2014-11-05

若手が育つ場づくり(母親型)

週末、10 over 9 reading club(河尻亨一さん)が主催する「Creative Maison - 表現×技術×教養を暮らしと仕事に」という会があって、8コマ中2コマだけだけどお話を聴いてきた。新宿御苑に隣接する昭和の邸宅「ラ・ケヤキ」を貸し切って、和室・洋室・リビングに分かれて連続トークショーを行うという洒落た会で、広告業界の人たちが多く集っていた。

アウェイ感満点の催しだったけど、私の場合どこの会に行ってもアウェイというのもあり、所在なげに待ち、始まったら静かに聴き、終わったらそそくさ失礼するという一連の動きをここでも…。この身のこなし、どんどん板についてきている気がして情けない。

それはそれとして、聴いたお話はたいそう面白かった。そのうちの一つが「広告&PR業界の人育て」で、登壇者は浅生鴨さん(作家/元NHK_PR 中の人1号)、須田和博さん(博報堂)、中村洋基さん(PARTY)というクリエイティブディレクターのお三方。元NHK_PR 中の人1号さんが作家になられたとは聞いていたけれど、名前が「あ、そうかも」になっていたとは初めて知った。

さて、若い時分は、朝礼とか一回も出たことなかったというPARTYの中村さんが、今は自分起案で月1の朝礼を開いたりしているそう。せっかく経営者になったんだから、その目線から若手を育てられたらという気持ちが、ここにきて芽生えてきたのだとか。でも、若手をどう育てたらいいのか。みんな優秀でいい奴なんだけど、野心や遊び心をうまく引き出したりできない。

博報堂の須田さんは、自主開発型クリエイティブ・ラボ「スダラボ」を発足して若手を育て、カンヌで広告賞を受賞したり、みんな活躍している。いったい、どうやって若手と関わっているのか。中村さんが、本当に悩んでるんですよ…と、等身大の問いを投げかけて、話はスタートした。

これに応えた須田さんは、何かを命じて育てるのではなくて、育つ場を作るということに徹していた。これは言うは易しで、実際にやって成果を出すのがものすごい難しいことだと思うけれど、須田さんはそれを自然体でやっている感じが伝わってくる。一方で、それを言語化してお話しされているからには、意識的にやっているということでもある。以下、須田さん語録メモ。

・これをやれ、これはダメというのは言わない。
・座席表にはこだわっている。観察はものすごいしていて、その人が伸びる環境をつくる。誰と誰を斜めにして、誰と誰を正面にするとか。
・自分は、上役に「あの子はいい」と褒めて言う役割。そうすると、本人も期待されてテンションが上がってくるし。
・ブレストは出るけど、書記をやっている。ポイントを抽出してホワイトボードに書く。そうすると、ぶれないし。
・プレゼンは、うまい人にはやってもらっている。
・自分は父親というより母親型で守ってあげるタイプ。「大丈夫?」って見守っている中で、子どもが勝手に育っていくイメージ。これは、ユーザーがどう自発的に動くかを作っていく時代にあっている気もしている。
・割と問題児が多いので、始末書は書いたりしているけど…(笑)。

クライアント前に若手に一通りプレゼンやらせて、あぁダメだなぁと思ったら「今のじゃわからなかったですよね?」といって、自分で一からプレゼンやり直しちゃうという話に、あぁそれはやっちゃダメだわーと須田さん。でも実際には、この局面をどう乗り切るかって難しい。特に自分指名の案件の場合、クライアントからすれば自分にプレゼンしてほしいわけで、プレゼンを若手に振るのも難しいし、若手がうまいことできなかったときの切り抜け方も難しい。須田さんも指名は多いと思うけれども。

中村さんは父親型と言う。PARTYは創業した4人が皆父親型らしく、星一徹が4人いる家のようだとか…。父親型はそれはそれで必要だと思うのだけど、とすると父親型がいけないのではなく、母親型を入れればいいという話か。

あと、これは特に挙げていなかったけれど、おそらく須田さんの日々の問いかけの中にも、若手の学びのきっかけがつまっているんだと思う。自分の考えた「答え」を与えるのではなくて、本人がより深く、より広い見地から答えを検討できる「問い」を、日常的に投げ続けているのではないかと思う。外から与えられる問いによって、私たちは自分の考える視点を変えたり、視野を広げたり、動機づけられたり、興奮させられたりする。

フランスの思想家、ルソーは四十近くまでうだつのあがらない芸術家志望で、愛人との間に5人も子どもをつくったり露出狂で捕まったりとろくでなし扱いだったそうだけど、あるとき懸賞論文の募集を見て、天啓を受けたかのような衝撃を受ける。ルソーを目覚めさせた問いは「学問と芸術の復興は、習俗の純化に寄与したか」というもの。その懸賞論文に受賞して、ルソーは一躍時の人になった。

何を問うか。何を問われるか。日常的にどんな問いを立ててくれる人のそばに身を置くか。そういう環境の威力のようなものを最近感じる機会が続いた。昨日読んだ、ここの記事もこれに関するもの。

効果的な問いを立てることも、問いに対する自分の答えを適切に評価することも、経験のいる仕事だ。メタ認知能力を養うには時間がかかる。熟練した人は、自分で秀逸な問いを立てて、それに自ら答える自問自答のなかで、秀逸な答えというのを見いだしていく。良い上司や先輩・同僚に恵まれると、そうした問いを日常的に受け取れる。それが後の成長に大きく影響するんだよな、と改めて考えた。

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