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2014-06-30

学びの後の学びサイクル

「今回学習したことは有意義だと思うんだけど、自分の仕事や職場環境に取り入れるのは難しい」というのは、社員研修でも勉強会でもよく聞かれる声だ。

オープンな勉強会などで、参加目的が「人脈づくり/コミュニケーション」なら別の価値が見出せると思うんだけど、「学習」目的で参加したのであれば、道なかば感が否めない。「今の仕事のパフォーマンスをあげたい」「先々必要とされる能力を先手打って身に付けておきたい」「その学習テーマに興味があり、習得したい」と思って参加したのに、そこで終わってしまってはもったいない。

「学習」というのは、ガニエによれば「行動に見ることができる学習者の特性や能力が変化するプロセス」と定義される。乱暴にいえば「行動変容」。だから勉強会に参加して「勉強になったー!!」と思っても、その後の自分の行動になんら変化が見当たらなければ、身になったとはいえない。それを習得したとは言えないのだ。

このあいだ参加した勉強会、その前・後の自分を比べてみて「行動に見ることができる変化」があるか。自分の仕事のやり方、(途中)成果物、工程、視点の持ち方、コミュニケーションの仕方は、どう変わったか。「少しは変わったと思う」とかではなくて、具体的に「何がどう変わったか」を言語化できるか。

意識的に自分の認知・行動を「変えた」場合、その言語化は難しくない。意識化は言語化とほとんど同義だ。言語化が難しいなら、何も変えなかったからではないか。とすると、学習は終わっていない、習得できていない、勉強会後に学習プロセスが断絶しているという仮説が立つ。乱暴かしら…。

でも大人が学習をやりきるのは、けっこう難しい。大人って「とりあえずしばらくはどうにかしのげる」だけの様々な知識・スキルをすでに習得済みだから、どこかで何か新しいものに触れても、日常に戻ると前のままでもやっていけて、ゆえにそのままやってしまう。意識的に「ここをこういうふうに変えよう」という言葉に展開して仕組み化しないと、流されていってしまう。

意外と学習は完遂しないままになりやすいものだし、意外と学習プロセスを完遂するのは難しいものなのだ。時間もかかる。勉強会参加だけで学習プロセスが完遂するケースはまれだ。すごい優秀な人は別として、一般的にはそういう認識でいたほうが学習は続けやすいのではないかと思う。

意識的に自分の仕事のやり方を変えるよう企てる。勉強会などで先駆者の話を聴いてきたのであれば、そのどのエッセンスをどうやって自分の仕事や職場環境に取り入れるのか。ガイドラインやマニュアルに組み込む、チェックリストやテンプレートに組み込む、ワークフローやスケジュールに組み込む、ルーチン業務に組み込むなどして、仕組み化する。

仕組みをしばらく運用してみてアウトプットを繰り返し、それを自分でも振り返り、信頼をおく上司や同僚・同業者やクライアントからもフィードバックをもらう。自分ではできているつもりでも、他の人からみたら全然できていないこともざらにある。人の声に素直に耳を傾けて、自分のアウトプットの問題点を正面から受け止めて分析する。こうやって、コルブの経験学習モデルをぐるぐるまわしていく。

コルブの経験学習モデル
経験学習尺度の構成

大人の学びの70%以上は、仕事経験によって説明されるそうだ。この「経験」部分をどう舵取りするか、それによって学びの成果は大いに変わる。できるなぁという人は、このサイクルをまわすことが日常になっている。たぶん、ここに書いてあることが、「え、何当たり前のことだらだら書いてんの、あんた」というレベルで日常に組み込まれている。

成人の学びの70%以上は仕事経験から得られる

ちなみに「研修や読書」からは10%だけど、もちろん無意味というわけじゃない。これにはこれのユニークな強みがあるのは、それを通じて学びを得た経験がある人なら説明不要だと思う。

私は教育を定義したデューイの言葉がうまく言い表しているなと思うのだけど、「教育とは、経験の意味を増し、その後の経験の進路を導く能力を高めるところの経験の再構築、再組織化である」というの。学習の能率化というのかな。経験価値の増幅というのかな。そういうのが研修や読書の中にあると思う。

「ある特定の経験から必ずある特定の学習が得られるわけではない」(*1)とも言う。同じ経験をしても学習結果に個人差が出るのは、誰もが知るところ。同じ勉強会に参加しても、その後それをどう取り入れるかで結果はまったく違うものになる。

私は社員研修をつくってクライアントに提供する立場だけど、研修直後までの任務が多く、その後まで人材開発のコンサルティングしますよ、みたいな広範な仕事はあまりない。それはそれで餅は餅屋だと思っているけど、視点は研修屋じゃなく、人材開発のサポーターとしてありたい。

受講者が実務で活かすのが難しいと感じていそうだなと思ったら、先方マネージャーさんと相談して、受講後のアンケートにこんな項目を設けたりする。

●今回の研修内容から「今後の実務に取り入れたいこと」、研修を受けてみて「今の仕事のやり方を変えようと思うこと」があれば教えてください。
●今回の研修を受けて「有意義だとは思うが、自分/自社の実務で取り入れるのは難しそうだ」と思うことがあれば、具体的にどのような障害・懸念が思いつくか、教えてください。

研修で全部が解決できるわけじゃない。だけど、受講者本人にも実務導入の壁を考えてもらい、言語化(意識化)してもらう。その現場の懸念点をマネージャーさんにレポートすることで、次のステップに進む際の問題を俎上にのせることはできる。けっこう共通の懸念事項が挙がってくる。ささやかではあるけれども、お客さんと同じ枠組みで問題意識をもって、次にバトンをつなぐ1走者として人材育成をサポートしたい。

話題がとっ散らかっているけど、最近「職場学習の探求 企業人の成長を考える実証研究」(生産性出版)を読みつつ、お客さんに研修を納めつつ考えたことメモ。

*1:金井壽宏・古野庸一(2001)「一皮むける経験」とリーダーシップ開発 - 知的競争力の源泉としてのミドルの育成. 一橋ビジネスレビュー. pp.48-67

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