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2013-09-16

3分タクシー劇場

この間終電を逃して、乗り換え駅から数駅分をタクシーで帰ることにした時のこと。駅から大通りに出て、信号待ちしている「空車」タクシーに近づくが、運転手は一向にこちらに視線を向けることなくドアも開かない。後方ドアから中を覗き込んでも反応を示さない。

窓をノックする術もあるが、気づいていないのではなく、気づかぬふりをしている気もして、いやなものを無理に開けても仕方ないかと、すぐ後ろの「空車」タクシーに向かった。そちらはすぐドアを開けてくれたので、乗り込んで行き先を伝える。

車が走り出してほどなく、運転手さんが口を開く。「ああいう乗車拒否って、ほんと嫌ですねぇ」と。そうか、私は乗車拒否にあったのか。今さっきあったことが「乗車拒否」という言葉と結びついていなかった私は、ああいうのを乗車拒否っていうんだなぁと、ふむふむ思いながら「はぁ」だか「ほぅ」だかと応じた。すると、運転手さんが話を続ける。

「気づいてるんですよ。気づいてるけど乗せないって、プロ失格ですよ。でもお客さん、ああいうのには乗らなくて正解。乗ったってどうせ気分悪い対応されるだけなんだから。ああいう同業がいるのは、ほんと嫌ですよ」と、思いの丈を熱く語る彼。私のような客の立場より、こういうのは同業者のほうが腹の立つものなのかもしれないなぁと思いながら話を聴く。

いや、わからない。私はああいう状況にあったとき、運転手がどうこうではなく、環境として受け止めるように回路がなっており、「腹が立つ」という方向に向かわないように構造を作ってあるのだが、世の中そんなタイプばかりではない。腹が立って嫌な思いをする客もあるだろう。

しかし、我ながらそう素行が悪い感じではなかったと思うし、「空車」にしてあったし、どういう理由で乗車拒否にあうのでしょう?と素朴な疑問をもち、運転手さんに理由を尋ねてみた。

すると、「女性だからでしょう」と運転手さん。「女性は移動距離が短いから、お金にならないって思ってるんでしょう。そんなこと言ってられる時代でもないのにねぇ。長距離しか乗せたくないんだったら、そう張り紙出しておけばいいんですよ。そしたらそもそも誰も車止めなくなると思いますけどね」と続ける運転手。そして彼が乗せている私の行き先は、性別と時代を象徴するように2〜3km先の超近場。ビンゴだなぁと感心しつつ、「なるほどー」と返す。

それで会話が途切れるかと思ったら、再び運転手さんが口を開く。あるいは、結局、これを言いたかったのかもしれないが。「仕事はね、前向きに楽しくやるべきなんですよ。ほら、ここと、そっちにも、倖田來未のライブ映像流れてるでしょ。これ、お客さん向けのサービスだと思われるんだけど、違うんですよ。僕が好きだから流してるんです♪」と満足げに語る彼。

運転席のほうと、後部座席のほうと、両方に小さな液晶モニタをつけて倖田來未のライブ映像を流している。「他で、こういうの流してるのって見ないでしょ」と言うので、「そうですね、あんまり見かけないですよね。タクシーでライブ映像とかって」と返す。「でしょう。こういうふうに工夫してね、仕事楽しまなきゃ」「そうですねぇ。いいですねぇ」というところで、目的地到着。

タクシー乗車3分だか5分の間。わずかな時間をより良い舞台に仕立てるには、乗客である私が、「ああいう同業がいるのは、ほんと嫌ですよ」の後に「いや、でもあなたのような人がいてくれれば安心ですよ」と返すべきだったのかもしれない。タクシーに乗るやいなや、「お、なんです?倖田來未のライブ映像じゃあないですかっ」と驚きがあってしかるべきだったか。と、よくわからない一人反省会をして床についた。

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コメント

> 環境として受け止めるように回路がなっており
ああ、私もそうかも!
でもって私の場合、この回路ができたのは「腹が立つ」経験を何度か重ねたからな気がするなー、と、本編と関係ないところでしみじみ考え込んでしまいました。

せんがんさん
私も回路づくりは、けっこう自主トレで強化しました。(笑)
職業がら、そのほうが都合がよいこともあってですけど、何より自分が楽というのが正直なところ…。
気骨精神を残しているのは仕事のことくらいです。

タクシーって普段利用することが殆ど無いんですが、こんな面白い運転手さんも居るのですね。

女性と男性で利用する距離が違う、というのは短距離だったら男性は歩いてしまうのか、それとも倹約家なのか、さてはて…と関係ないことを考えてしまいました。

私も最近はそんなに乗らないのですが、けっこういろんな人がいますよ。身の上話を語り続ける人とか、車内に電飾つけて天井ガラス張りにしてる人とか…。
言われてみると確かに、利用する距離に男女差が出るのって、なんでなんでしょうね…。さてはて。

なるほどー。本文にもあるように特色が出てきているのですね。

利用する距離に関してはどうなんでしょうね。自分は倹約…なのかなと思いましたが、よく考えると代替手段がある場合が多いのと、そんなに急いでいないので使わないのかもって感じました。

電車があまり整備されていない父方の実家に帰った時とかはすべての移動がタクシーで少しリッチな気分だったのを思い出しました。

利用する距離に関しては、男性側に長距離が多いってわけじゃなく、女性側に短距離が多いってことなんでしょうけど、性別のことはよくわかりませんな。。
深夜にタクシー乗る時はたいてい疲労しているので、静かな中に小さな音でNHKのラジオ深夜便流してるタクシーがなかなか乙です。

このエントリーを読んで、Night on the planetを思い出しました。ジャームッシュの。ほんの3分間の中にも、ドラマはあるんですよね。

こんなところで言うのもなんですが、林さんといろいろ話してみたいです。ぜひご飯でも!

sasakiさん、コメントありがとうございます。Night on the planet、おもしろそうですね。この話を読んで映画を思い出してくださるなんて恐れ多いというかなんというか…。
今の仕事の山が10月後半には一段落すると思うので、そのあたりでご飯しましょう。

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