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2013-02-17

つなぐ仕事

土曜日、昼過ぎから御茶の水で予定があったので、少し早めに家を出て神保町を散策した。地下鉄の神保町駅から地上にあがってきて、駿河台下の三省堂書店のほうへ裏通りを行く。人の歩くテンポがゆったりしていて、それが誰の迷惑にもなっていないふうが心地よい。建ち並ぶ小さな本屋の店先で、各々興味をひかれるままに足を止めては本を拾い上げ物色している。

最近は、何か目当てのものがあって本屋に行くということがなくなった。目当てのものはたいていAmazonで買ってしまう。本屋には、目当てをもたずに行く。棚と棚の間を下向きかげんにうろうろし、ピンと来たものを買う。私がよく買うのは小説の類いだが、ジャケ買いならぬ表紙買い、帯買いをよくするようになった。

見るものは、平積みされているものにほぼ限定される。残された人生の時間と、私の読むスピードを考慮するに、平積みされているものだけでも、それを全部読むことはまず無理だ。そして新しい本は次々に出てくる。棚に並んでいる背表紙の本を手にとる余地はない。

だから割り切って、私より書物に造詣の深いその店の書店員さんが「これお薦め」という意図をもって平積み配置しているものに焦点をしぼる。そこから、表紙、帯、POP広告など見て、ピンと来たものを買って帰る。

なんだかワクワクしていろいろ買いたくなるときと、そうでないときとある。それが私とその本屋の相性によるものなのか、本屋の優秀さや匠の技によるものなのか、私個人のそのときの状態が影響しているのかは、まだいまいちわかっていない。

ともかく、ここ数年で私にとっての本屋は、偶発的な本との出会いの場として役割を確立しつつある。今の自分は知らないけど、知ればとても素敵な世界、あるいは知るべき世界がある。そういう前提認識が、私を本屋にいざなう。

この認識は私がとても大事にしているものだ。自分の見えていない広大で深遠な世界が、途方に暮れるほど果てしなく残されていることをわきまえて最期まで生きていきたい。物事への思慮深さと、他者の仕事への敬意を持ちつづけて生涯を終えたい。

そんなわけで、本屋さんに行くと、本屋さんの薦めるもの、つまり平積みされている本に、とても素直に注意を向ける。そして、表紙や帯文、POP広告などを見て、著者と読者を仲立ちする出版社や書店の人の専門性に、存分に自分の身をゆだねる。生産者と消費者をつなぐ仕事に敬意をもち、信頼をもち、本を買う。曖昧な期待感をもって本屋さんに行く。それが最近は、とくに愉しい。

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コメント

棚差しされると、即死するわけだわ(泣

死活問題(笑、えない…)。まぁ、1消費者の意見ですし、すべてのケースでってわけではないですし、実務書ではなく小説をイメージして書きましたし(全力フォロー)。

あ、その想定はもちろん。小説よりは専門書のほうがマシだと思いますけどねー。棚差しされた時の存在感も、いろいろ検討する要素の一つです。

こまやかな仕掛けがふんだんに詰まってるんですねぇ、一冊一冊に。

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