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2012-12-03

イヤホンすると腰が重くなる

近所の喫茶店で本を読んでいると、杖をついたおじいさんと、ほか数人のおじさまグループが店内へやってきた。1階席は概ね埋まっており、カウンター席がちらほらあいている程度。2階もあるが、杖では階段を上がるのが大変。客「エレベーターは?」、店員「ないんですよ…」という背後のやりとりで事情を察し、「こちらどうぞ」と席を譲る。

ありがたがられるが、「そもそも一人で来て四人席に座ってるなよ」という話で、自分で自分に脳内突っ込み入れつつ、「いや、来た時にはすいてたんですよ」と脳内言い訳しつつ、「まぁまぁ、いいじゃないですか、混んできたらすぐ退いたんだし」と脳内仲裁しつつ、そそくさとカウンター席へ移動。まぁとにかく機動力は認めてやろう。

しばらく読書して、店を出て電車に乗る。一駅行ったところで人が空いたので席に座る。が、降りる客も多かったが、乗ってくる客も多かった。足もとがおぼつかない様子のおばあさんが乗ってきたのですぐ席を立つ。「どうぞ」と声をかけると、おばあさんと、娘さんらしき女性に礼を言われ、あぁよかったと気分も快く。

またしばらくするとだいぶ車内がすいたので、再び席に座る。イヤホンをしてiPhoneから何か聞き出す。次の駅で、お年を召した方が乗ってくるが、すっと腰が上がらない。別段、今日はもう2回譲ったからもういいだろうというような回数上限的な意識もなく、別段座っていたいーと切願するような体の疲れもなく。

なのに、二度できたことがなぜできない。むしろ、二度やったことを三度目踏みとどまるほうが難しいのが人の常ではないか…。先ほどまでとあきらかに身のこなしが違う自分にとまどう。どこ行った、善良な市民。

それで思い当たったのが、イヤホンだった。いや、別に自分のなっていないのをイヤホンのせいにする気はないのだが、イヤホンをしていると腰がすっと上がらない。言葉がすっと出てこない。いや、もっと手前の段階で何かが動いていない。それはそれで、自分を探ってみたところの結論として疑いようがないのだった。

イヤホンしていないときと比べて、しているときは世の中と自分の間に一枚壁がはさまっている感じがする。自分が膜に覆われている感じというのか、世の中から遮断されている感じというのか。感覚的にそうなると概念的にも、ちょっと世の中のことが我がごとと一線を画す感じになる。それこそがいいときも、もちろんあるのだが。

世の中の情報をすっと、通常のスピード感で摂取できていない感じ。摂取した世の中の情報から次の行動につなげる判断のスピードも、おそろしく鈍っている。その上、判断の鈍さが影響して、判断自体が行動を起こさないほうへと変わってしまう、やりすごしてしまう。世の中に対する機動力の鈍化を体感。

日常五感から情報を汲み取って働いている力っていうのは、何気ないようでものすごいパワフルなもんだなぁと感心してしまった。いろんなことを察知して、判断につなげて、すぐ腰をあげたり、声を発したり。それって、何か単体で感覚器が動いているんじゃなくて、たぶん全体で感じ取って全体でうまいこと動いているんだなぁと。

イヤホン批判をしたいわけではまったくないし、今後もイヤホンにはお世話になり続けると思うけれど、ちょっと意識してバランスとってつきあおうと思った。

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