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2012-07-11

アンケートの書き方

ここでは基本的にひとりごちた系の文章をしたためることが多いのですが、今回はちょっと提案したいことを述べます。何かというと、アンケートの書き方です。何のアンケートかというと、まぁセミナーとか勉強会とか、その類いです。

私は、個人向けの講座とかセミナーとかワークショップとか、ここ数年は法人向けの社員研修を提供する仕事をしてきて、その手のアンケートは「書く」より「作って(書いてもらって)読む」ほうが圧倒的に多いのですが、ここ15〜16年の仕事人生で、おそらく万を超えるアンケートを読んできました。

それで思うところというのは、アンケートのコメント欄には、そこで学んだこととか、学び損ねたこととか、疑問に思ったこととか、その学習テーマや登壇者の見解に対する意見とか、つまり「学習の中身」について書くのが本筋だよねってことです。

セミナーか何かに参加して、最後にアンケートを書くとき。たいていは、いくつかの選択式の設問の後に、コメント欄があるんじゃないかと思います。「感想やご意見を」という感じで、自由記入欄があります。

私は大小さまざまな規模の、いろんなスタイルの、いろんな対象者向けの学習の場に立ち会ってきましたが、特に大型のセミナーイベントで、ここのコメントに「登壇者のプレゼンパフォーマンス」を評価して、それで終わっちゃっているものを見かけることが少なくありません。説明が分かりやすかったとか、スライドがきれいだったとか、話の構成が良かったとか、あるいはその逆とか、声の大きさがどう滑舌がどうとか、まぁいろいろあります。

舞台にあがる側やそれを運営する側に相応の責任があるのは百も承知ですが、それは今回の話の範疇ではないので置いておいて。自分が参加者の立場だったらってところに焦点をしぼると、登壇者について思いをはせる時間があったら、自分について、あるいはその学習テーマについて考えたり振り返る時間に使ったほうが、参加した目的にかなっていると思うのです。

いや、もちろん人間、話し手のパフォーマンスというのは気になるし、良かったものに対して良かった、悪かったものに対して悪かったとアウトプットしたい気にもなる。それに、私もそれを書くこと自体が悪いことだとは思っていないし、運営者側からすればそれはそれで貴重なフィードバックです。問題は、焦点がどこにあるか。そのコメント過程で行われる振り返りは、そこだけで終わっていいのかってことです。

たとえものすごい登壇者のプレゼンが下手であろうと(いや、それはそれで正気でいられないのが人の常かもしれませんが、そこは頑張って)、その人がそのテーマで語ろうとしていることは何なのか、その刺激から自分はどんな学習成果を得られるだろうかと考える時間に使ったほうが、それに参加した自分の趣旨にかなっているはずです。

じゃあ、なんでその本来目的からそれて、コメント記入欄を書くときに登壇者審査員と化してしまうのか。その理由を考えてみたのですが、それで一つ思い当たるのは、自分に向き合うより、登壇者に向き合って登壇者を評価するほうが楽だからです。自分に向き合うほうが圧倒的に大変だから。

自分がその場で収穫したことは何か、これまでできていなかった/わかっていなかったことは何か、これからさらに何を身につけなくてはいけないかを考えたり振り返ったりするのは、頭を使います。疲れます。だから、セミナー受講後、疲れた状態でアンケートを書いていると、無意識のうちに易きに流れてしまって、楽なほう楽なほうにフォーカスしてコメントを残してしまう、それでおしまいにしてしまう、のではないか。

でも、そこは最後のもうひと踏ん張りで、楽なほうに流れていないかなと自己チェックしてみて、登壇者ではなく自分自身を振り返るように立て直しを図るのがいいんじゃないかと思うのです。

セミナーとか勉強会って、登壇者が壇上の上に立っていて、参加者が壇上の下にいるから間違いやすいのですが、学習の場の主役というのは、学習者である参加者です。登壇者ではありません。主役は、主役をはるんだから疲れて当然なんです。疲れる役回りなんです。ただ、その役を担わなくてもばれない。ばれない中で、役を全うするか、しないかは自分次第。でも、その役を全うして主役をはるなら、つまり学習するために来て本当に学習するなら、最後のひと踏ん張りまで頑張って、登壇者はそこそこに、自分の振り返りをしようぞ、と。

当然ですが、そこに焦点をあてて自分のその日の学習の振り返りをコメント欄に書いている人はたくさんいます。比較的小規模な学習の場では、その比率が高いように思います。

私が最近手がけているのは10〜30名規模の一社向け社員研修が多いですが、そういうところで採るアンケートでは、自分がその場で「どんな気づきを得たか」とか「何を学んだか」「どんな危機感や問題意識を抱いたか」とかの中身に言及したコメントが多いように思います。そう自然となるようなアンケート作成に努めてもいるわけですが、人数規模とかも関係しているような気がします。

ということで、今度セミナーイベントなどでアンケートを書く機会があったら、自分が何に向き合ってコメントを書いているのか、自己チェックしてみてはいかがかなと。自分に向かって振り返りをしているか、登壇者のパフォーマンス評価だけに終始していないか。

いや、実際気を抜いているとけっこう登壇者評価に終始してしまうことって多いと思うのです。セミナーが終わった後って、疲れているし、早く会場を出ないといけないし。だから早く書き上げたいって状況で、じゃあ何を書くかって、お礼を言いたい気持ちとかがふわっとわき上がってくるから、じゃあとりあえずと「わかりやすかった」、あ、でも「事例をもっと増やしてほしい」、あと「ありがとうございました」。で、そこそこ欄が埋まると、まぁこれでいいかとなるんだけど、そこでチェックしてみるとまったく自分の振り返りになっていないで終わっているなぁという。

まぁ、そう深い振り返りもその場ですぐできるものでもないのですが(少なくとも私は…)、アンケートの場でなかったとしても、「中身」にフォーカスして振り返るという意識は大事かなと。そうしたほうが有意義かなと思う次第です。

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コメント

あわせて読みたい、けど読むには長すぎる、ので相当これについてたくさん考えたい人向けに、一応Google+での反応とやりとりをメモ。
http://plus.google.com/u/0/113100517422007103669/posts/J5Ug5W9vekv
「内省すること」「意見の共有や交換をすること」はどちらもそれぞれに有意味なので、分けてそれぞれの目的に適ったツールなども整備していけるといいのかな、と思いました。

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