« 「IAシンキング」の挑戦 | トップページ | 喪失と自由 »

2011-04-05

「IAシンキング」講座と本

先述の「IAシンキング」本のChapter2-4にカードソーティングの演習があります。これはまさに弊社講座の演習ネタを使っていたので、ほほぉーと思って興味深く読んだのですが、使う道具や詳細設計が講座と本では微妙に違うので、鍛える筋肉も実は微妙に(マニアックにみれば大きく)異なっています。ということを掘り下げて考えてみたら個人的に勉強になったので共有メモ。

演習ネタが「料理本のメニューをつくる」というのは、講座も本も同じ。

  1. 味の素は、自社サイトで展開している「レシピ大百科」から人気のレシピをピックアップして書籍化することにした
  2. 今後、サイト内に蓄積されたレシピを編纂して、定期的にレシピ本を出していく予定
  3. 第一弾は、とにかくアクセス数が多いレシピを30個ピックアップして載せる

ということで、この第一弾の本の「目次」、そして「タイトル」を考えろというのがお題。つまり、提示された素材をよく吟味して、何らかの軸をもって分類し、本の目次を作成。ターゲットを定めてコンセプトを立てて、それを本のタイトルに表せという演習課題です。

で、本のほうはカードを付けるのが難しいこともあり、30個の「レシピ名」を一覧表にして文中に掲載しているのだけど、講座のほうはこちらでカードを用意してあって、チームごとに一組30枚を配って演習していただいています。

ここにちょっとした違いが出てくるのでして、本の一覧表をみて30個のカードを自作した場合、カードに書かれている情報は、本で情報提供されている「レシピ名」だけになるわけですが(つまり「肉じゃが」とか「焼きなす」とか)、講座のほうで配るカードには「レシピ名」のほかに「ジャンル(和・洋・中)」「カロリー」「塩分」「調理時間」「人数」「写真」が記されています。

つまり、提示される情報の種類が、講座のほうが多い。これは別に、優劣を語りたいわけでもなければ、演習の難易度がどっちがどうという話でもなく。情報量が多い講座のほうが易しく、情報量が少ない本のほうが演習の難易度が高くなるとも一概には言えないと考えます。どちらかというと、鍛える筋肉の核がずれる、違うタイプの演習になるというほうが適切ではないかと思うのです。

本のほうは、提示される情報の種類が「レシピ名」に限られるため、どんな分類が考えられるか、一から自力でタグ付けしていく力を養うことに主眼が置かれます。一方、講座のほうは、見えている情報の種類が多いので、まず普通は見えている情報からとりあえず分類を試してみることになる。

すると。この30種のレシピ、実は適当にピックアップしているのではなくて、「ジャンル」が和食に偏るようにしてあるのです。講座で配るカードは「ジャンル」が左上に書かれているので、とりあえずいろいろ分類を試してみようとカードをいじり出すと、まずたいていは「ジャンル」で分け始めるわけです。

そうすると、カードがあんまり「和食」に偏るので、これじゃ本の目次として不恰好だなということに気づく。「和食20品」「洋食7品」「中華3品」みたいな。必然的に、じゃあ他の分類でまた試してみようということになる。

そして、他の分類軸、例えば「カロリー」で分けてみようとか「調理時間」で分けてみようとか考えたときに、ただ頭で考えるだけじゃなくて、実際カードを動かして様子をみてみないと、さっきみたいに「分類してみたら不恰好だった」ということがあるかもしれないという懸念を抱く。そう直近で学習しているので、実際カードを移動して様子をみてみようということになる。そういう行動を誘発するように仕組んであるわけです。

そういうのがインストラクショナルデザインの一環で、実に底意地が悪いと思われるかもしれませんが、どうでもいいところで意地悪はせず、肝心なところに限っていかに意地悪できるかが大事なのであって、つまり腹は白いということをご理解いただきたい…。

そうして、カードをいろんな軸で実際動かしてみているうちに、いろんな分類軸、ターゲット、本のタイトルが、こちらの想定外の領域まで拡散的に発想されていくことを期待しています。さまざまなやり口を試していく時間の中で、手を動かしながらアイディアが広がっていく。答えはいろいろ、着地点は人それぞれ、ゴールはむしろ想定外のところに突き抜けていてほしいし、そういう創造的裏切りを起こすのが人間の尊さだと思っています。ただ、ある所を突破した上でその人ならではの創造的な答えを出すよう導きたい。それが再現性のあるスキルとして定着していったらいいなと。

なので、もし創造的な域に達せずに、カードに書かれている「ジャンル」「カロリー」「塩分」「調理時間」「人数」という与えられた枠組み(見えている情報)だけで分類を考え続けているようなら、ファシリテーターが頃合いを見計らって、「カードに書いてある情報で分類するだけじゃなくて、書かれていないことを分類の軸にしてもいいんですよ」と促す。そうして、ある所を突破するようドライブをかける。

最終的に目次・タイトルの決定に持ち込むと、だいたいチーム毎に異なるターゲットに向けた異なるコンセプトの本の企画が仕上がる。そこにたどり着くまでにどんな分類を試したかも、いくらかチームによって異なるというふうになります。

講座のほうで、「レシピ名」に留まらず、あえて情報の種類をやや多くしてカードを提供しているのは、実務面でもそういうケースのほうが多いと考えるからです。例えばクライアントさんからサイトに掲載する商品情報など素材をいただく場合、「商品情報」には、クライアント社内でタグ付けされた情報がなんらかくっついてくるはず。

その商品の管轄事業部名だったり、サイズなり定価の区切り方だったりが会社規定のものになって提供されるはずで、受け取る側はそれらのタグを意識的に着脱可能な状態に持ち込まないと、知らぬうちに事業部別の情報分類で済ませてしまうってことになりかねないと考えるわけです。

情報をもらった時点でタグ付けされている分類方法を意識して、自在に取り外したり区切り方を変えてみたりといった柔軟な視点が必要不可欠ではないか。そこにいかにユーザー視点を持ち込んで再分類できるか、中立的に情報を扱えるかみたいなことが欠かせないと思うので、その辺を考慮すると、カードソーティングの演習には一定の情報の種類をあえてくっつけて素材提供したほうがいいかなぁと考えました。

で、勉強会などでも使えるよう2種類のカードを作ってみたので、よかったらダウンロードして使ってください。

「cardSorting.pdf」(「レシピ名」だけのレシピカード)

「cardSorting_add.pdf」(付加情報ありのレシピカード)

リンク先のような名刺カード(A4紙1枚10面ミシン目入り)を買って出力したら、うまい具合に出てくれると思います。

ところで、そんなネタばらし、ここに書いちゃっていいのかって思われるかもしれませんが、たぶん大丈夫。これは出すべき答えのスタート地点をどう切るかって話に過ぎないし、本にも答えは載っていない。答えは自分で作るもの、というのが、あの本の言いたいことだと思うので。一抹の不安を抱えつつ…。

« 「IAシンキング」の挑戦 | トップページ | 喪失と自由 »

コメント

だいぶ前にアマゾンで注文したのに、品切れでまだ届かないんですよねー。
頼むよ、坂本さーん!
……じゃなくて、アマゾン? あるいは版元!?

おがさん
なんだかAmazonは地震の影響で遅延してるみたいなんですよね…。他はオン・オフラインとも出回りだしているみたいなんですけど。しばしお待ちをー。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/56452/51311424

この記事へのトラックバック一覧です: 「IAシンキング」講座と本:

« 「IAシンキング」の挑戦 | トップページ | 喪失と自由 »