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2005-07-10

ロンドン一人旅

2005年7月、ちょうどロンドン同時多発テロがあったときに一人で訪れたロンドン旅行の話。

■2005/7/10 ロンドン一人旅の幕開け

今年の初めからお世話になっている会社では、夏休みを7~8月の間に5日個別に取ることになっている。前後に土日をつけると9日間の連休になる。せっかくお盆時期をはずして休暇を取れるなら、やっぱり海外一人旅でしょう!ということで、なんとなくピンときたロンドン行きの航空券とホテルを予約。

今日が出発の日。諸々の仕事たちを置き去りにして、とにかく発つ。数日前にロンドン同時多発テロがあったけど、とにかく発つ。というわけで、朝5時起床、6時家を出発、6時半成田エクスプレスに乗り遅れ、30分待ちぼうけの後、当日予約のため「立ち席」で成田まで立ちぼうけ。まぁま、そんな感じでゆるい旅の幕開け。

しかし、私にだって学習能力はあるのだ。前回のドイツ行きで飛行機を遅らせた過ちはもう二度と繰り返さない。空港に着くと、チェックインして手荷物検査して出国審査して、とにかくすべての手続きを早々にこなす。行けるところまで行く。いやいや、見事でした、とても普通の人でした、私。今回はキャセイパシフィックを利用して香港経由でロンドンへ。次回はやっぱり高くとも直行便にしようと思いつつ、午前10時成田発、同日午後8時頃のロンドンに到着。

テロ事件があって1週間も経っていない気難しい時期ながら、私の風貌が「こいつは何もせんだろっ、はい、次」的扱いを受けやすいことに変わりはなく、ヒースロー空港も比較的スムーズに。入国審査ではお兄さんに"Kanko?"と尋ねられ、"Kanko."と首を縦に振ったら、そのまま審査終了。

荷物検査は5つくらい質問されて少し回答に窮したけれど、"What ~?"なら目的(観光)、"How long ~?"なら滞在期間、"How much ~?"なら所持金と、頭の2語だけを頼りにとりあえず回答。が、大方当たっていたようだ。

一つ後で気がついたことには、私"How much ~?"と尋ねられた時に"~pounds."で返した記憶がまるでない。そういえば、"How much~?"だけ2回尋ねられたような記憶。そしてまた同じ答えを真面目顔で返したような記憶。私、数字はポンドなのに、単位はドルで答えてしまっていたに違いない。ずいぶん貧乏な旅行者だなと思われたか、こいつ単位間違えてるよと思われたか。大雑把に言うと1ポンド200円、1米ドル100円。実際の1/2くらいの所持金を申告したことになるんだけど、とりあえず問題なかったらしい。

さらに、ずっと6泊8日の17日帰国と思っていたんだけど、実は5泊7日の16日帰国だと旅の途中で知った私。そんな旅人を受け入れてくれた寛容な国。

■2005/7/11 ひたすら歩く

ロンドンに行くと決めてから、何度か「何しに?」と尋ねられたのだけど、答えは「散歩」。街を歩きたいのが一番なのであって、それ以外の目的意識はこれといってない。あとは夏休みなのだから、のんびり本でも読んで過ごせれば尚いいね、という感じ。観光名所をできるだけ多く回ろうという意欲もなく、買い物をしようとかおいしいものを食べようという意識にいたっては全くもってかけらも無かった。旅行者にあるまじき意識の低さ……。

それで、とにかく歩いた。この日は一日中歩き続けた。はじめの2時間ぐらいはその地の地図を持っていなかったので半分迷子ともいえる状態で歩いていたのだけど、途中で大きい駅を見つけてロンドン中の道の名前が記された地図を買ったので、午後からは自由自在。ロンドンは通りに全部名前がついているので、地図さえあれば自分がどこにいるのかすぐに(ある程度)わかる。

よく知らない街はやっぱり足をつかって歩いてみるに限る。時間をかけて街に触れていくことで、その街のありようみたいなものがなんとなく肌で感じ取れるようになっていく。方々の商店街に異様にバスタブ屋が多いことから、ロンドンという街が人種のるつぼであることまで、2時間くらい街をさまよっていれば自然にわかってくる。「自然に」わかってくるというのが散歩のすごいところ。

私にとって海外を旅するというのは、「その国を知る」というより「自国を知る」という方が合っている。老若男女を問わず、都会のど真ん中を裸のような格好をして食べ歩きしている人の多さも、夜9時半を過ぎてようやく日が沈みだす街並みも、すべてはロンドンというよりイギリスというより、日本の私の日常空間がどういうものなのかを改めて意識化させてくれるために機能している。

旅行中はずっと村上春樹の「海辺のカフカ」を読んでいたのだけど、その中にヘーゲルが規定した「自己意識」について書かれているところがあった。簡単にまとめてしまうと、自分がいて相手がいる、お互いがお互いを交換し投射しあう、そうすることによって自己意識が確立される、相手が存在し相手を意識することで初めて自分というものを深く理解できるといったもの。私にとっての海外旅行って、そんなものなのかもしれないなぁと思う。

■2005/7/12 夕暮れまで歩く

昨日はロンドンの西側に位置するホテルを基点に南へ、東へと10数km歩いた。速くもなく遅くもないペースでてくてくと。天気は晴れ。夕暮れ時を迎えると、遊びつかれた少年のような疲労感を抱いて帰途についた。帰りも歩き。

翌日の今日は地下鉄に乗ってロンドンを横断し、東側をまたてくてく歩いた。大英博物館を見学し、ここから徒歩で南下。ロイヤル・オペラ・ハウスに酔いコヴェント・ガーデンで一息、サマセット・ハウスにしびれナショナル・ギャラリーでうっとり。まったくの門外漢ながら建物フェチな私の心をわしづかみにするロンドンの街並み。はぁ、なんて素敵なんでしょう。なんて隙なくどこもかしこも英国的なんでしょう、とものすごくおのぼりさんな感動にひたりつつ、今日も炎天下を10km近く歩き、へとへとになってホテルに帰る。帰りは地下鉄。

朝9時過ぎに出て夜9時過ぎに帰ってくる。勘狂うのはこちらの日没のせい。この時分、ロンドンは夜の9時半を過ぎてから日が暮れだす。日暮れを目安に行動していると、日本でいう夜時間に知らぬ間に突入している。

しかし、私は言わずもがな日本生まれの日本育ち。幼少の頃から「カラスが鳴くから帰りましょ」と自然の成り行きとともに時間を察し、それにあわせて家路につくことを正しいと心身にたたきこまれてきた生粋の日本人なのだ。日が暮れるまで外で頑張って、日が暮れたら家に帰る、これこそが善行。守る守らざるに関わらず、そういう倫理観をもって生きてきた私に、夕暮れの時間を無視して一日の外出を終える行いなんて難しすぎるのだ(元気なうちは)。そうして知らぬ間に思いのほか一日の活動時間が延長してしまいへとへとに。

果たして、夏は午後10時、冬は午後4時に日が暮れる世界に生きるイギリス人は、子供の頃どんなふうにしつけられるんだろうか。冬は4時までに、夏は10時までに帰るようにって言われるのか、それとも「カラスが鳴こうと鳴くまいと、6時になったら帰りましょ」なんてややこしい歌を耳元でささやかれながら大きくなるのだろうか。「腹の虫が鳴いたら帰りましょ」とか、もう少し言い回しを変えたほうが心に響くかな。

どちらが良い悪いの問題でもないんだけど、夕暮れ時が午後4~10時と季節によって大幅に変わる国では、自然と切り離して「人が時間を管理する」意識を子供の頃からしつけられる環境にあるのかなぁなんて考えてみたり。そうすると仕事に就いてからも「日が暮れたから帰ろう」と帰宅の判断を太陽に委ねたり、「日が暮れちゃえば21時も0時も同じだ」と投げやりに残業することもなかったりするのか。しないのか。しないよね。

■2005/7/13 テロ事件後の地下鉄事情

今日はロンドン中心部から電車に乗って50分ほど南下したところにある海辺の街、ブライトンを訪れた。日本でいえば鎌倉のようなところ。イギリスから望める海に寄り添いながら一日をのんびりと過ごす。

ここで穏やかな風景に触れていると、少し先で少し前に同時爆破テロ事件があったことなどまったく想像できない。しかしやっぱりそれは確かに起こったことなのだ。ほんの数日前に。

実際ホテルでテレビをつければニュースの多くはこの事件に関することだし、地下鉄の一部路線(区間)は運行されていない状態が続いている。そうすると必然的に運行している電車に人が集中するから、私は通常より混雑した地下鉄を利用しているのだと思う。

通常と比べることは私にはできないわけだけど、様子を見ていると、こっちの人はある程度電車に人が乗り込んでしまうと、東京で暮らす私からすればまだまだ乗れる!という状態でもあっさり電車を一本見送る。無理に電車に乗り込もうとせず、次の電車を待つ。東京だったらすし詰めになったって今目の前にある電車に乗ろうとするのが普通だ。でもロンドンの人はそれをしない。それは、この混雑した息苦しい状態がテロ後の「非日常」だから、東京のように「日常」のことではないからではないかなと思った次第。でも、単にロンドンの人は東京よりスマートに生活しているだけなのかもしれない……。

加えて、ロンドンの地下鉄(とバス)にはほとんど冷房がついていないようで、なおかつ窓も開かない(か開けない)ので、人が多く乗り込むと、もうそれは大変な蒸し風呂状態になり、一気に東京の満員電車以上の劣悪環境となる。電車をあっさり見送るのはそのせいかもしれない。実際この日帰宅ラッシュ時に乗った地下鉄の車内は、誰か気が狂って暴れだすんじゃないかと真剣に心配してしまうほど重々しくよどんだ空気を背負い込んでいた。

そう映ったのは、日頃ほとんどお目にかからない日の光を浴びすぎて私の体が疲労困憊していたこともあるのだけど。というわけで、この日は9時までも体が持たず、明るいうちにホテルに戻って晩ごはんも食べずに眠りについた。

■2005/7/14 ロンドンしっかり観光

今日はロンドンの街をしっかり観光。実は昨日今日と2日間、友だちの友だちとして知り合ったロンドン在住の方が、初対面ながら仕事を休んでガイドをしてくださった。もう大変ないたれりつくせり状態でちょっと恐縮してしまう。恐縮されると相手もかえってやりづらいだろうというのは重々承知なのだけど。

そしてさらにたちの悪いことに、私は恐縮しつつも、かなりマイペース&観光客らしからぬ落ち着きモードなテンションで通してしまったので、ものすんごいガイドしづらかったと思う。もっとキャピキャピッ!としたテンションだとガイドのしがいもあると思うのだけど。

さらに普通は胸ときめかせるだろう、目輝かせるだろうという買い物にも食事にも無反応とキタ。君は本当に女なのか?でも自然にはそうならない人間が意図的にそれするとかなり気色悪いし。意図的にできるほど器用でもないし。

だから、これでもうこの先ガイドするのがいやになっちゃったかも、というのが心配。いやいや本当に申し訳ないことをしました。申し訳ないとは思っているのに改善ができない自分勝手な私。反抗期の少年少女が「悪いと思っているのに、つい親にきつくあたってしまう」やりきれなさに近い?近くないか。でも私ほどやりづらい人は早々現れないはずなので、その点は安心してほしい。

しかし、本当にたくさんの感動をいただいたのだ。何よりこの日連れていっていただいて感動ひとしおだったのがセント・ポールズ大聖堂。ここに行けただけでもロンドンに来た甲斐あり、というものすごい建築。一日中ここにいたいと思ったし、写真でも映像でもなく、現地に行ってその空間に身をおいて五感で味わう旅行というものの価値を強く感じさせられる空間だった。

その後、ミレニアム・ブリッジを渡ってテート・モダンを訪れ、さらに船に乗ってテムズ河を行く。ウエストミンスターの国会議事堂&ビッグ・ベンに始まり、どこもかしこも英国的な風景を眺めつつ、ゴール地点のロンドン塔に到着。木陰のベンチに座って目の前のテムズ河にかかるタワー・ブリッジ(ロンドン橋)を眺め、のんびり時を過ごす。ロンドン観光も最終日。また訪れたい街だなぁとしみじみ思いつつ、月光が少しずつ存在感を増してくる。帰りも船で。

■2005/7/15 おこづかい2万円

朝6時過ぎに起きてシャワーを浴び、いつも通りホテルで朝食をとる。フライトは正午過ぎ、ホテルから空港までは30分くらいで着くのだけど、お土産を買う時間をとるのと、何かがあって乗り遅れては大変!ということで、7時半頃にはチェックアウトして空港に向かう。さすがに早すぎだけど。

そうそう、これまで枕元には1ポンドのチップを置いていたのだけど、この日は1ポンド硬貨を切らしていて、とはいえその上となると10ポンド紙幣になってしまうので、小銭の有り金をすべてかき集めて枕元に塔にしてきた。でも数えてみると、1ポンドに若干満たない。とにかく有り金(の小銭)全部置いていきます、という心意気は伝わったと思うのだけど気を悪くしなかったかどうか心配。

最寄り駅では下り電車となる空港行きの本数が少なく、プラットフォームでぼーっと電車を待って結局8時半頃に空港に到着。空港のチェックインカウンターでも、キャセイパシフィックだけが9時過ぎに開くらしくて結局30分ほど列に並んで待ちぼうけ。ただ、その甲斐あってか通路側の席を取れた。通路側の席が実際人気なのか不人気なのかは知らないけど。

その後、また出国審査、荷物検査など?よく覚えていないけどとにかく行き着くところまでひたすら必要なプロセスを進み、あとは飛行機に乗るだけの状態にして免税店で気の済むまでゆっくりお土産を買うことに。ここで1万円強のお金を使い、実はここでの買い物がこの旅一番の支払いとなった。

往復航空券で14万円強、朝食つきの宿泊費で5万円弱、あわせて19万円の大金は確かに出発前に支払っていたのだけど。それ以外の旅費として7万円分の外貨を用意して、実際帰国して残金を日本円に戻したら4万円強戻ってきた。ということは、旅の間に使ったお金は3万円弱。そのうちの1万円強がお土産代。つまり私のおこづかいは2万円強だったということがわかる。

最近のお姉さまがたの海外旅行で使うおこづかいの相場がどれくらいのものなのかよくわからないけど、ロンドン1週間の旅行でおこづかい2万円、旅費総額22万円はきっと質素な方なのでしょう。そんな感じで控えめに何事もなく帰国の途についた。

■2005/7/23(sat) 編集後記

振り返ってみると、あっという間に終わってしまったロンドン一人旅。でも短期間ながら一日一日を満喫した感があって、名残惜しいというより、また遊びに行こう!って元気よく思える後味だ。

これまでいろんな人に面倒をみてもらって海外旅行を実現してきたおかげで、一人で海外を旅することへの漠然とした不安がずいぶんと軽減されてきた。英語はやっぱりさっぱりだし、これといって自信のネタになるようなものは何もないんだけど、とにかくささやかに一人旅を楽しむにあたってはどうにか乗り切れるんじゃないかなぁというところまで(気分的に)到達した。

なんというか、世界は一つでつながっているのだし、新宿駅には一人で行けるのにロンドンには一人で行けないってのはわけわからない話だろう、という今回の旅の着地点。次回辺りからは、気を抜かず、でも意気揚々と一人旅を計画してふらっと出かけていけるかなぁ、なんて。来年もどこか行きたいなぁ。

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