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2004-09-04

麻酔注射

そうだ、今日は麻酔注射を打たれる日だった。そう気づいたのは、既に歯医者さんの診察台に乗った後のことだった。2週間前、担当医のお姉さんに「次回は麻酔をして○○の治療を」と言われ、「麻酔って注射ですか?!」と少々取り乱してしまったほどだったのだが、その後しばらくしてから今の今まですっかり忘れてしまっていた。

なぜ忘れてしまっていたのか、答えはすぐに思いついた。来週会社で健康診断があり、そこで採血が行われるという知らせを受けたからだ。それでまた激しく動揺してしまって、そのことで頭がいっぱいになってしまっていたのだ。

何はともあれ、今の敵は眼前の麻酔注射である。席に着くなり診察台が倒され、早速麻酔注射とご対面である。といっても、私はご対面など御免なので、とにかく目をつぶって一切何も見ない。痛い視覚情報は痛みを倍増させるだけだ。「何か頼りになるもの」と思い、とりあえず左の親指にその大役を預ける。右手の指たちがこぞって左の親指にしがみつき、痛みを待機する。

するとお姉さんが、「鼻でゆっくり深呼吸してくださいね」と囁く。恐怖におののく私にとってこの効果は絶大であった。何もなしでは、私は左の親指だけを頼りに、無意識にも痛みのする方へ意識を集中させてしまう。しかし、絶妙なタイミングで出されたお姉さんの指示は、私にその時やるべき仕事を与え、私はそれを、それだけを必死に従順に行おうとするのだ。

鼻に全神経を集中させ、深く深呼吸。浅くちゃだめだぞ、お姉さんは深呼吸と言ったのだ。口で息しちゃだめだぞ、お姉さんは鼻でしろと言ったのだ。と、より忠実に従うためのあれこれに頭が占拠される。無理やりでも占拠させる。そうこうしているうち、麻酔注射が終了した。はぁ、一つ苦しみを乗り越えた。

とは言うものの、麻酔注射自体はおかげさまでさほどでもなかったのだ(このノウハウは来週の健康診断にもぜひ活かしたいところである)。問題はその後。どんどん麻酔が効いてきて、自分の体なのに自分の感覚が働かない。これで一気にとても悲しくなってしまった。ブクブクをしても、ぴよぉーっと明後日の方向へ水が飛んでいってしまうし、ペッとしてもだらーっと水が流れ落ちてしまう。じっとしていても自分がこぶとり爺さんになってしまった感じがする。

私は口の中のほんの一部の麻酔で、それも数時間の効きだけど、大病を患った人など常時薬で感覚を麻痺させて生活を送っているのかと思うと、ほんと悲しくなる。これはつらい。自分の体なのに自分の思うように働かず、全てを医者に委ねるしかない無力感。ちょっとやりきれない。そんな悲しみとこぶとり感を引きずって自宅に戻り、なんとかご飯を食べて洗濯やら掃除やら植物に水やりやらを終え洗面所に入ったら、鏡の中にひじきをくっつけた自分の顔を見つけた。はぁ、悲しい。ちょっとやりきれない。

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