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2004-08-12

父が兄に手をあげた話

私の父は何でも自分ペースであれこれやってしまう人で、あまり他人ペースで動かない人だ。ずっと営業畑でやってきたので、外ではいろいろ気を遣っているのだろうけど、家にいる父しか知らない私からみると、根本あまり協調性のない人だと思う。逆にいえば、自主的に動くことに長けているといえるかもしれない。よく言われる「B型の長所と短所」を正確に併せ持った人だと思う。

私たちが子どもの頃、父は毎週末私たちをどこかに連れて行ってくれた。父がこういう性格であると想定して当時のことを思い出すと、きっとあれは父が心の底からそうしよう!そうしたい!と望んで動いてくれていたんだと思われ、幸せを感じてしまうことがある。娘の勝手な思い込みだが。そんな父だ。

先月、父の社長就任祝いということで実家に戻り、兄夫婦も呼んで幕張のホテルでお食事会を開いた。その時どういう経緯でだか「父が兄を殴った」という話が出た。もう十数年も前の話だろうけど、兄が反抗期の時、母になにやらいちゃもん?をつけた事件があったらしく、それを受けて父が兄に手をあげたことが一度だけあったそうだ。(注:反抗期後の兄は穏やかで優しい人です)

その話を聞いて、私は(たぶん妹も)本当に驚いてしまった。私の知る父は怒らない人なのである。会社でどんなか知らないが、家庭で怒るのは見たことがない。手をあげるなんて全く想像できない。別にいつもにこにこ穏やかなタイプではないし、決して怒りを感じにくいタイプでもないと思う。でも、私たち家族に対して感情に身を任せて怒るようなことは絶対にしない人だ。そういうことを、お食事会で「父が兄を殴った」という昔話を聞いて、初めて意識した。

父が笑って言う。「子育てで怒ったのはあの一度きり。おまえ(兄)がお母さんの言うこと聞かないっていうから。俺は子育てをお母さん任せにして何もやってこなかったから、子どもたちがお母さんの言うことを聞いてくれないと困るんだ」と。母は「そうよ!さんざん人任せにして」という表情だったし、まぁそういうあれこれも夫婦間にはいろいろあったのだろうけど、私はこの父の言葉を聞いて、家族の大黒柱として母と子どもたちを守ってきたのはやはり父なのだなぁと静かに感動してしまった。

父は自分のやり方で、私たち3人を育ててきたのだ。母とは別の立ち位置で、その位置でこそできる役割に徹してきたのだと思う。怒ることを人任せにするのは楽な部分もあるけど、何十年という間、3人もの子育てを通じて怒らない役割に徹するというのは、それはそれで大変なことだと思う。そして、母ではない立場から父である自分が怒るべきと判断した一度だけ、感情からではなく自分の役目として、兄を殴ったのではないかと思う。母を守るため、兄を守るため、家族を守るために。そして、私はそんなことがあったとは露知らず、いつも父という「揺るがない安定」を感じながら人生を送ってきた。父は長い年月をかけてしか教えられない「安定」を、身をもって私に教えてくれた。

今回この事に気づいて、正直今頃になってはっとしている自分に愕然とした。「生まれてから今日までの間、父が私たちを怒らなかった」ことに気づくのは難しい。ある時の流れの中で、ある事柄において、「何も起こっていない」ことに気づくのは難しいことだ。こんな昔話でもなければ、私はもっとずっと先まで気づかなかったかもしれない。でもそれは、実はものすごく偉大なことだったり、尊いことだったりする。そういうことに自ら気づける人でありたいと思う。

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